慈雨 (集英社文庫) の感想

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タイトル慈雨 (集英社文庫)
発売日2019-04-19
製作者柚月 裕子
販売元集英社
JANコード9784087458589
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学

購入者の感想

 「虎狼の血」ですっかり度肝を抜かれた柚月裕子の刑事もの。
 本書で取り上げられた少女誘拐事件は、実際の冤罪事件として有名な「足利事件」がモデルと思われ、清水潔の「殺人犯はそこにいる」をすでに読んでいる人にとっては、既視感があります。
 上記事件を知らないで読んだ人にとっては、その部分もミステリーとして楽しめるとは思いますが、それを分かったうえでも読者を惹きつける、ミステリーを超えた部分の面白さが本書にはあります。
 主人公神場は、警察官を退職し、妻と二人で四国八十八か所遍路の旅をしている神場の視点、一方、少女誘拐殺人事件が勃発し、それにあたる現役刑事緒方の視点。
 緒方は神場の娘と付き合っているが、神場は娘に妻と同じ苦労をさせたくないがため、二人の交際を認めることができない。 
 刑事ドラマに父と娘の関係、元上司と部下の関係、交番時代の苦労や刑事時代の忘れられない自身の汚点。
 これらが合いまったその見事な構成は、やはり巧いなあと思わせます。
 後半は涙なしでは読めません。

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