勝者に報酬はない・キリマンジャロの雪: ヘミングウェイ全短編〈2〉 (新潮文庫) の感想

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タイトル勝者に報酬はない・キリマンジャロの雪: ヘミングウェイ全短編〈2〉 (新潮文庫)
発売日販売日未定
製作者アーネスト ヘミングウェイ
販売元新潮社
JANコード9784102100110
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 英米文学

購入者の感想

17の短編と翻訳者による解説が収録される。すべてが骨太かつ不器用な「男の世界」、それでも優しさは存在する。

『The Gambler, the Nun, and the Radio ギャンブラーと尼僧とラジオ』
メキシコ人が銃撃され搬送された病院での入院患者フレイザー氏の体験。これといったトピックはないのだが、ラジオの件が気に入った(p198)。人々の寝静まった深夜、ボリュームを絞ったラジオに耳を傾ける。遠い街の音楽を聴き、DJのトークに聞き入り、その街と人々の情景を思い浮かべ、そして、その街の人になる。デンヴァー、ソルトレークシティ、ロス、シアトル。未明になると時差の関係で、ミネアポリスの陽気なミュージシャンの演奏が始まる……。アメリカ西海岸へ行きたくなるな。
「つづけるんですよ、のんびりとね。で、運が変わるのを待つんでさ」(p206)こういう生き方も悪くないかも。
人民の阿片、についての考察も傾聴に値する(p207~211)。

『A Natural History of the Dead 死者の博物誌』
「ほとんどの人間は動物のように死ぬ。人間らしくは死なない」(p135)
田園地帯の弾薬工場の爆発跡。そこに散乱する数えきれない女性の遺体の描写は激烈だし、第一次世界大戦時の放置された戦死者の様相は異様だ。イタリア戦線の野戦衛生隊で数多の死にゆくものを見つめてきた著者ならではの記述は、実に生々しい。

『The Short Happy Life of Francis Macomber フランシス・マカンバーの短い幸福な生涯』
東アフリカ、あるいは南部アフリカにおける「ゲーム・ドライブ」。こんにちでは大型動物の観察こそ観光の目玉とされているが、1930年代には狩猟が許されていたんだな。だから本当の意味での「ゲーム・ドライブ」か。
風を巻いて草むらを突進してくるライオン(p288)に、怯えの感情を抱くのは人情というものだろう。だがアフリカの世界では逃げることは許されないし、主人公マカンバー氏のように、白人からも黒人からも軽蔑の眼差しを向けられることとなる。そして妻からも愛想を尽かされるハメとなる。

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