象 (村上春樹翻訳ライブラリー) の感想

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参照データ

タイトル象 (村上春樹翻訳ライブラリー)
発売日販売日未定
製作者レイモンド カーヴァー
販売元中央公論新社
JANコード9784124035070
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 英米文学

購入者の感想

迫りくる自らの死を見据えたレイモンド・カーヴァー最期の短編集です。
自身の半生に題材をとった作品群から、若くして創作の終りを迎えた彼の想いが感じられます。

『引越し』 過ちを繰り返す母に対して尽きない愛情を注ぐ。
人の不完全な自我の有り様にどこまでも寄り添う作者の矜持。

『誰かは知らないが』 眠れない夜の妻の夢と眠たげな会話。
日常から隠されていた死が姿を現し不気味な世界を垣間見せた。

『親密さ』 落ち葉を掃き集めるように誰かがやるべき事を彼は成した。
その犠牲となって別れた妻にカーヴァーは跪き頭を垂れる。

『メヌード』 浮気相手の亭主から突き付けられた最後通牒。
過去の誤謬が差し迫るなかで物事の本質は溶解し始める。

『象』 家族と自らの際限ない窮乏に疲れながらも幸運を口にする父親。
古き時代の夢は朽ち果て、目の前に迫りくる「今」に身を委ねる。

『ブラックバード・パイ』 愛する妻が去って行き二人の思い出は終った。
幸せな時間は終り、主人公は今、文学に向って別れを告げる。

『使い走り』 チェーホフの臨終に鉢合わせた青年は床のコルク栓を拾い上げた。
尊敬する作家の流儀を受け継いだという文筆家としての自負が漂う。

作品の後半は個人的な心象が織り込まれて難解さが極まってきますが、最後の『使い走り』では彼の持ち味である緻密な論理と冷静な表現が復活しています。
死の宣告を受けながらも純文学を志向した冷徹なまでの精神力・・・。それが稀代の小説家の最期の誠実さなのかもしれません。

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中央公論新社から発売されたレイモンド カーヴァーの象 (村上春樹翻訳ライブラリー)(JAN:9784124035070)の感想と評価
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