現代文読解の根底 (ちくま学芸文庫) の感想

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参照データ

タイトル現代文読解の根底 (ちくま学芸文庫)
発売日販売日未定
製作者高田 瑞穂
販売元筑摩書房
JANコード9784480096043
カテゴリ人文・思想 » 言語学 » 日本語・国語学 » 日本語研究

購入者の感想

本書は、もともと高校生に向けて書かれた学習参考書ですが、社会人が読む教養書としても十分通用します。
筆者は、現代文の典型を近代文学とみなし、その真の読解のために「ぜひ知っておいてほしいこと」を十二章にまとめています。それはさながら近代文学概論とでも呼ぶべき様相を呈したもので、たしかに、現代では内容的に一部古くなったものも見られますが、それでも日本の近代文学、さらに、それらを通してみた日本の近代というものの内実が非常にわかりやすくまとめられていると思います。
たとえば、本書の第七章から第十二章は、急速な日本の近代化のなかで文学者たちが自我を確立・表現するために、何を考えどう苦しみ生きたのかが豊富な引用をもとに述べられています。
日本の近代化とはすなわち西洋化であり、それは外発的なもので、しかも西洋が数百年かけて実現したことをわずか数十年で成し遂げようとしたたいへん特殊なものでした。そういう上滑りの近代化を進めていけば日本はたいへんなことになると本気で危惧したのが夏目漱石だったのです。そのような、漱石が時代の中で取り組んだ課題を彼の講演や小説の一部を引用して説明しているのです。
読者が文学作品から何を読み取ろうと本来自由でよいと思います。しかし、夏目漱石や森鷗外などの文学者が、日本の近代という非常に特殊な状況の中で何を考えどう生きたのかを知ることで、またいろいろ違ったものが作品から見えてくるのではないでしょうか。
そういった意味で、本書は、近代文学概論であるとともに文学を通した見た一種の日本近代精神史素描といってもよいものだろうと思います。
人は時代の制約を逃れて生きることはできないと思うとき、混迷する現代社会を生きる我々が本書を手引きとして近代文学を読むことで、なんらかの生きるヒントを手にできるかもしれません。ちょっと大げさな言い方かもしれませんが、これが本書の現代的意義ではないかと思います。

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筑摩書房から発売された高田 瑞穂の現代文読解の根底 (ちくま学芸文庫)(JAN:9784480096043)の感想と評価
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