発展する地域 衰退する地域: 地域が自立するための経済学 (ちくま学芸文庫) の感想

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参照データ

タイトル発展する地域 衰退する地域: 地域が自立するための経済学 (ちくま学芸文庫)
発売日販売日未定
製作者ジェイン ジェイコブズ
販売元筑摩書房
JANコード9784480095022
カテゴリ » ジャンル別 » 社会・政治 » コミュニティ

購入者の感想

著者のジェイン・ジェイコブスは『アメリカ大都市の死と生』で著名な都市の経済論の論客である。彼女は経済学者ではなくジャーナリストであったので、その筆は理論的というよりも経験主義的で、その主張は厳密でもない。しっかり定義せずに新出概念を提示するあたりは、ちょっと学問的に脇が甘い感じがする。

だが一方で、既存の経済学が見落としていた「都市を基本単位に据えた経済」というものを鮮やかに描くのは爽快である。国を単位に経済を見れば、統計などの面で対象を厳密に扱うことができ学問的に厳密にはなるけれども、経済のダイナミズムを解明するという点ではあまりにその解像度が低すぎて、どうして経済は成長する(できる)のかという基本的なことすらもよく分からない有様なのである。

本書では、都市を経済の単位に見て、経済成長のダイナミズムの中心を「輸入置換」という現象に置く。これは、これまで他の都市から輸入されていた財を、自ら生産するようになること、つまり輸入品を地場品で置換することである。これによって、これまで輸入に当てられていた資本を他の輸入品に振り向けることもでき、より重要なことに置換品の生産のための雇用も生まれるのである。

都市が発展していくためには、この「輸入置換」が次々に起こっていく必要がある。さもなければ、その「都市」は僅かな特産品のみを生産するだけの地域になってしまい、情勢の変化などに脆くなり、発展の道がなくなるからである。

では、この「輸入置換」が起こるためにはどうしたらよいのだろうか? 著者は、そのためには「インプロヴィゼーション」が必要だという。「インプロヴィゼーション」とは、即興的な工夫とでも言えばいいだろうか。先進都市から輸入されている物品は、発展途上にある都市にとっては高度すぎることが多く、自前でそのものを作ることは難しい。またそのための設備や材料も乏しいだろう。だから、あり合わせのものでなんとかする必要がある。この「あり合わせのものでなんとかする」のがインプロヴィゼーションである。

 小説なら文庫本を買ってやめられなくなって、一気読みなんてことはざらですが、ちくま学芸のラインナップではまれなことでしょう。岩波の青帯白帯ならなおのこと。ところが、どっこいこの本は途中ではやめられませんね。電車の乗り換えの時に本を閉じるのが惜しいくらい引き込まれます。ジェイン・ジェイコブスはその筋で超有名な割には、なかなか入手困難でしたが、この名著が文庫本で出たことは、ありがたいですね。

 文化の発展段階における都市の先行説をはじめ、目からうろこの論点はいろいろあるのですが、経験的に納得感の高い論点を一つ上げれば、第10章あたりです。
 
 日本の諸都市はそれぞれが輸入置換都市として模倣可能な輸入品を模倣し互いに新しい種類の輸出品の市場になり、もちつ持たれつの関係で発展したというところです。われわれ戦後から高度経済成長時期の記憶を持つ者は、かつてあらゆる工業製品に舶来品と国産品が併存していたことを覚えています。たとえば自動車、伊藤忠が輸入するバリバリの外車から、日野がライセンス生産した半分国産のルノー、いすゞがライセンス生産したヒルマン、そして純国産の今やピンクになってしまったクラウン、そういったラインナップから、お金のあるものは外車、一般庶民は、ライセンスか国産車を選びました。電気製品でもかたやジーメンス、フィリップス、テレフンケン、RCA、GEは高嶺の花、ナショナルか、東通工で我慢しなければなりませんでした。食品だって、ゼネラルフーズのバヤリースが舶来の香りを漂わせれば、純粋国産の三ツ矢サイダーが対抗する。こういった、舶来、国産の対抗図式を空気のように当たり前に感じて育ってきました。

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