遺伝子―親密なる人類史(上) (早川書房) の感想
参照データ
タイトル | 遺伝子―親密なる人類史(上) (早川書房) |
発売日 | 2018-02-15 |
製作者 | シッダールタ ムカジー |
販売元 | 早川書房 |
JANコード | 登録されていません |
カテゴリ | 文学・評論 » エッセー・随筆 » 外国のエッセー・随筆 » イギリス・アメリカ |
購入者の感想
前作「がんー4000年の歴史ー」もそうだが、科学史でありながらまるで優れたサスペンス小説のように「次は、次は」と読者を一気に最後まで誘導してしまう著者の類まれな技量に魅了される。著述内容に関してはこれまで読んできた多くの進化論、遺伝子に関する「一般読者」向け科学書で個々に書かれているものではあるが、それを時系列的に相互の関連を説明しながら最新の生命科学の状況説明に至るという手法は復習の意味も含めて非常に役にたった。難を言えば現在の生命科学研究で最も重要な課題である遺伝子編集(特に生殖系細胞での)での生命倫理に関する記述が物足りない。著者の危惧も理解でないわけではないが、現代進化論や遺伝子を語るうえで欠かすことのできない「利己的な遺伝子」の著者リチャード・ドーキンス(彼はそれが可能であればクローン人間を見てみたいとまで言っている。)やスティーブン・ピンカー(ダウドナの著書「CRISPER-究極の遺伝子技術の発見」にも記述されているように中国の科学者のヒト胚細胞での遺伝子編集実験に対するセンセーショナルな反応に“邪魔をするな”と注意喚起した。)、マット・リドレー(「徳の起源ー他人を思いやる遺伝子」の著者)など遺伝子技術やAIの将来を楽観的に見ている科学者、科学ジャーナリストの考え・主張とその真意も解説して欲しかった。さてさてムカジーは次に何を語ってくれるのだろうか。