大脱走 [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray] の感想

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日本人が好む第二次大戦モノで、唯一戦闘映画ではないのがこの｢大脱走｣だ。1963年公開のハリウッド作品で、題材は戦時捕虜収容所からの集団脱走と言う変わり種。
スティーブ･マックウィーン演じるヒルツの痛快なバイク疾走シーンや、脱走兵を匿う市民の草の根の反抗、記憶に残る映画サントラでは屈指の｢大脱走のマーチ｣等、見どころ満載の名作中の名作。子供の頃は毎年のようにテレビ洋画劇場で放映されていた記憶がある。
どうして日本人にウケたのか、それは製作･監督のジョン･スタージェスにある。彼は戦時ドキュメンタリー映画監督出身で日系アメリカ人俳優との親交があり、｢七人の侍｣のリメイクである｢荒野の七人｣を撮っている。その過程で、損得では語れない｢使命感に燃える男達｣への造詣が深まったのだろう。ドイツ収容所長との間の騎士道精神的な交流や、後方攪乱と言う責務の為の気の遠くなる脱走計画、バラバラな出身国兵士が互いの才能を持ち寄ってプロジェクトに献身する姿勢に、とても愛らしさを覚えずにはいられない。
しかもその脱走計画は命の危険に晒される決死の行為だが、逸れに情熱を賭けた理由は命令だけではない。精神破綻を来しかねない鉄条網で囲われた牢獄からの自由にこそ、彼らが我が身を投じた本能だった。国家への責務を愚直に果たそうとするリーダーの男、息苦しい狭い穴掘りに挑む男、楽観的に脱獄を繰返して囚人達を勇気付ける男、障害者を最期まで守る男、囚人を誇りある兵士と認めて人間の尊厳を守る男、多彩な男達の生きざまがギッチリ詰まった幕の内弁当なので、何度観ても興奮し、勇気を与えられる。
戦時下、しかも相手はゲシュタポ擁するドイツ軍なので必ずしもハッピーエンドではない。それでもエンディングロールで高らかに大脱走のマーチが流れ、俳優達が映し出されると、戦争の過酷な刹那さとともに痛快な思いが胸を強く鼓動させ、そして最後には爽快な気持ちにする。
当時、間違いなく生きていた男達の切なる気持ちと熱き行動を、現代の私達が共有出来る事こそ映画の素晴らしい醍醐味だ。
鮮明な画像に完璧な吹替えのBlu-ray、自分にとって大きな影響を与えてくれ、永遠に忘れられない名作を心行くまで堪能できる事に感謝の言葉しかない。