男色英雄図鑑 の感想

世に言う「BL本」というのは一体どんな代物だろう？
と思って購入してみた。
たしかに右側ページに描かれているイラストは、歴史上の人物とは無関係と言っても過言ではない「少女漫画」か「少女歌劇団の男役の絵」にしか見えない。　これには違和感を覚える人も少なくはないだろう。
しかしながら、左側の解説は世界史上・日本史上の著名な男性たち(一部「神話伝説中の英雄」を含む)を、かなり正確かつ簡略に記していて好感がもてる。
とりわけ、世界史上の著名な人物は、作品社から刊行されている『【図説】ホモセクシャルの世界史』を主に参考にして書かれているので、信頼のおける内容に仕上がっている(ただし、アレクサンドロス大王をアレキサンダーと英語風に訛記したり、ローマ皇帝エラガバルスをヘリオガバルスと表記したのは、ネットに影響されたせいか余り頂けないが・・・)。
日本や中国を含む世界史上の「男色」で名高い「英雄たち」のあらましを知りたい読者、とくに若い人々、には参考になる一書である。
もちろん古代ギリシア・ローマの偉人たちで欠落している人物も大勢いるが、今なお現代日本社会に蔓延する偏見から逃れている点を評価して敢えて四つ星に留め置くこととしたい。
●附記　敢えて短所を挙げれば、三島由紀夫の項目に明らかなように歯切れの悪い記述が目立つ点であろう。既定事実に関しては、もっと截然たる物言いをして欲しいものである。