魅惑のオペラ ニーベルングの指環 3 ジークフリート(小学館DVD BOOK) の感想

　ワルキューレから20年あまり、ジークリンデの産んだ英雄ジークフリートは、母親の死後、ニーベルング族のミーメに育てられる。ミーメは、成長したジークフリートが、大蛇ファフナーを倒し、大蛇ファフナーの守るラインの黄金と指環を手に入れることを目当てに、ジークフリートを育てる。
　ジークフリートは「恐れ｣を知らぬ若者に成長し、母親の形見である魔剣ノートゥングを鋳直し、ノートゥングで大蛇ファフナーを倒すようミーメにそそのかされる。そして、ジークフリートは大蛇ファフナーをノートゥングで倒し、ラインの黄金、隠れ頭巾と指環を手に入れる。すなわち、今流に言えば、ジークフリートの事業は大成功を収める。
　この神話の世界で、ワーグナーは何を言いたかったか？それは素性もわからない青年創業者が、年配の経営者の助力で大成功を収めた場合を考えれば良いかもしれない。青年創業者は、自分の力で大成功したと思っているが、それは年配経営者の助力によってであるということである。そして、ウオータンは、この英雄ジークフリートとブリュンヒルデを結婚させようと考える。
　今流に言えば、ウオータンの事業は、成功から40年以上立って時代遅れになっている。そして、ジークフリートの事業に顧客を奪われている。これを神話の世界に置き変えるならば、ジークフリートは、炎に包まれた、ブリュンヒルデの眠る岩山に向かうが、ウオータンに行く手を阻まれる。ジークフリートは、ウオータンの槍をノートゥングで破壊する。そして、岩山に閉じ込められたブリュンヒルデと結婚する。これが、第3幕である。
　ワーグナーは、1848年のドレスデン革命に参加し、当局から社会主義者として睨まれていた。だから、お金持ちの世界を神話の世界で描くしかなかった。ワーグナーが、神話とか伝説に基づいて話を作る時、それは、神話や伝説にこと寄せて、ワーグナーの生きた当時の世界を描こうとしたのではないか？その意味では、ローエングリンとタンホイザーも同じではないでしょうか？