幻燈辻馬車〈上〉―山田風太郎明治小説全集〈3〉 (ちくま文庫) の感想

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タイトル幻燈辻馬車〈上〉―山田風太郎明治小説全集〈3〉 (ちくま文庫)
発売日販売日未定
製作者山田 風太郎
販売元筑摩書房
JANコード9784480033437
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 全集・選書 » 個人全集

購入者の感想

自由民権運動の暗部をここまで描いた小説って私は他に知らない。

政治運動が、崇高な目的を掲げれば掲げるほど、現実の運動家がマキャベリズムに走り(つまり、正しい理想のためなら犠牲はやむ負えないという発想に支配されていく)過激な地下活動(理想を急速に実現しようとすればするほど運動は過激化していく)の中、「あいつはスパイだ」「革命の敵は殺せ」という疑心暗鬼の中瓦解していくという現実を鋭く描いています。ロシア革命から連合赤軍に至るまでの革命運動の暗部を感じさせる小説。

というと、なんか堅苦しく難しいもののように感じるかもしれませんが、基本はホラー小説で、重要な副主人公は幽霊というのが面白い。主人公は、旧会津藩士で辻馬車を走らせる干潟干兵衛とその孫娘。彼の妻は戊辰戦争で「官軍」に辱められて自害、息子は西南戦争で戦死し、その二人が幽霊となって、孫娘の危機が迫るたびに現れます。
会津藩の悲劇(ただ、会津は一方的に被害者として描かれるのではなく、戊辰戦争の折会津藩士もまた残酷な行為を行ったことも明かされます)と、明治の様々な群像、そして自由民権運動が絡み合う傑作。山田風太郎の明治小説の中でも最も成功した作品の一つではないでしょうか

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