ビゼー:歌劇「カルメン」 (全曲) (完全生産限定盤) の感想

※サンプル画像 クリックで拡大します

オペラ録音の愛好家であれば 概ね必携ともいえる盤のシングルレイヤーSACD でのリリース。前回のハイブリッドSACDを買い逃している立場としては迷うこともなく買うに至った。
録音した当時55歳と心身とも充実したカラヤンが、ウィーン・フィルを指揮した壮麗なる「カルメン」。大きな存在感を示すプライスや、朗々たる声でエスカミリオを演じるメリルなど、贅を尽くしたキャスト。デッカの優れた技術は多彩で豪華な演奏を余すところなく捉え、約60年経過した現在においても、同じ時代における録音である「オテロ」と並び他にかえがたい価値をもたらす。

カラヤン（1908～1989）は、名実ともに20世紀のクラシック音楽界に大きな時代を築いた指揮者である。その時代の一つの頂点は、1955年にベルリン・フィル常任指揮者、翌1956年にザルツブルク音楽祭およびウィーン国立歌劇場芸術監督就任など、文字通りヨーロッパ・クラシック音楽界の「帝王」と目されていた時期であろう。1950年代初頭から継続しているEMIへの録音に加え、1959年からは独グラモフォン、加えてウィーン・フィルとはデッカへの録音がスタートし、一人の指揮者が音楽的ポストとレーベル契約を独占して手中にするのはカラヤン以前にもカラヤン以後にも皆無で、文字通り20世紀クラシック音楽界に君臨する存在であった。そうした中でも、名プロデューサーであった ジョン・カルショウとの共同作業によって、ウィーン・フィルと進められたデッカにおける録音では、1959年の「アイーダ」から1963年の「カルメン」まで、豪華キャストをそろえた5つのオペラ全曲盤が制作され、いずれもオペラ録音史にその名を残す名盤ばかりである。この「カルメン」は、1963年11月にウィーン、ゾフィエンザールでの収録されたものである。リリースのレーベルは、デッカと提携していた合衆国のＲＣＡとなったもの。