日本のヴァイオリン王 - 鈴木政吉の生涯と幻の名器 の感想

現在の鈴木バイオリン製造株式会社の創業者である鈴木政吉の初の評伝です。
丁寧に、明晰に整理されいて非常に読みやすい書籍です。

政吉が生まれた幕末から明治・大正・昭和へと、
時に山葉寅楠（現ヤマハの創業者）や来日した巨匠たちの小話を挟みながら、全く飽きさせません。
大政奉還、昭和恐慌・名古屋大空襲、彼が生きた時代は本当に激動の時代でした。
その中で、楽器の帝王であり女王であるヴァイオリンの制作を志し、
制作過程の近代化（機械化）を推し進め、日本の音楽文化を下支えした。
また同時に、一人の職人として銘器グァルネリの研究、
その成果として「済韻」と呼ばれる秘技を用いた高級ヴァイオリンの制作。

一人の企業家として、また一人の職人としての生き様に思わず心が動かされます。
時代とともに工場の規模・制作本数にも変化が現れ、
当時の音楽への需要をを窺い知ることができる。

同郷のTOYOTAと同じく日本の近代（文）化を支え、
世界に誇る企業として、今学ぶ最良の資料としてオススメします。