統辞理論の諸相――方法論序説 (岩波文庫) の感想
参照データ
タイトル | 統辞理論の諸相――方法論序説 (岩波文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | チョムスキー |
販売元 | 岩波書店 |
JANコード | 9784003369524 |
カテゴリ | ジャンル別 » 人文・思想 » 哲学・思想 » 哲学 |
購入者の感想
ノーム・チョムスキーが提案した生成文法理論は、言語学のみならず、心理学・脳科学など、他分野をも巻き込む「認知革命」と呼ばれる学問上の変革を引き起こした。この『統辞理論の諸相』は、そのチョムスキー理論の初期の集大成というべき著作。今あらためて読み返すと、1960年代の出版ながら、その後半世紀余りにわたって理論が劇的な進展を遂げた今も、その基本的な考え方・問題意識が、依然として有効でまったく古びていないばかりか、現在に至る理論の発展を予見しているかのような記述も随所に見られることに驚かされる。言語学・認知科学の世界に今も金字塔のような輝きを放つ歴史的著作を、良く練られた訳文で読者に提供してくれる福井・辻子両氏に敬意と感謝の意を表したい。「訳者解説」には訳者の博識・言語学および関連分野への深い造詣が活かされており、チョムスキーの生い立ちなどのエピソードも興味深く、本文を読む前に一読すると理解が深まる。出版50周年を記念したチョムスキーの序文に加え、岩波文庫版出版に寄せた序文も添えられており、学問的にも意義の大きい出版物である。人間の脳が言葉を生み出すしくみを解明しようとするチョムスキーの言語理論に興味をもつすべての人に強くお薦めしたい。