グラディエーター [DVD] の感想

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貴公子から愚帝に堕ちるコモドゥス、私怨なる刺客から救国の勇士へ解脱するマキシマス、興行師から先帝の忠臣に還るプロキシモ、皇女の地位より憂国の士を選ぶルシッラ、日和見主義を悔いて目覚めるクィントゥス、単なる抵抗勢力からの脱却をマキシマスに託すグラックス、部族への帰還より仲間の志に尽くすジュバ。
本作は、膨張させたポピュリズムを利そうと画策する皇帝と代議員制による理性を掲げる元老院との緊張関係に揺れるローマ帝国を舞台に、各々の個性が運命にもがきながら織り成す壮大な叙事詩。舞台設定が正しければストーリーが史実に忠実かどうかはこの際、関係無い。命を懸けて守るに値する国体が、艱難辛苦の末に古代ローマから現代に議会制民主主義として受け継がれた天祐に感謝出来ればそれだけで十分だ。
戦闘＆剣闘、建造物＆装飾、服飾＆装備、演技＆CG、音楽＆演出、非の打ち所の無い完璧なローマ帝国の映像がそこにある。
これはラッセル･クロウ主演の最高傑作であり、西洋歴史物では個人的に、本作、ベン･ハー、ブレイブ･ハート、キングダム･オブ･ヘブン、キング･アーサーを五大傑作と評する。リドリー･スコットとは、日本人には到底及ばない、かくも壮大な問いを映像にするものだと毎度感心させられる。