ポスト資本主義 科学・人間・社会の未来 (岩波新書) の感想
参照データ
タイトル | ポスト資本主義 科学・人間・社会の未来 (岩波新書) |
発売日 | 2015-09-17 |
製作者 | 広井 良典 |
販売元 | 岩波書店 |
JANコード | 登録されていません |
カテゴリ | ジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論 |
購入者の感想
著者は現代の成熟資本主義を人類史における第三の定常化と読み取り、「格差是正」と「地方の振興」などを柱とする、新しい経済システムと処方箋を提案している。今なお成長を追い求め格差拡大が続くアメリカ型「新自由主義」的経済システムと、ドイツや北欧で実施されている、福祉国家型システムと対比させながら、後者の方向に舵を切るべきだとしている。時代遅れの「新自由主義」とその価値観である小さな政府、自己責任論にしがみつく経済学者らに比して、資本主義をより長い時間軸で考察する著者の提案の優位性は明らかだ。
しかし、現実の世界を見ると、ポスト資本主義は必ずしも定常型社会とはならないような気もする。エネルギーが絶えずフローする散逸構造においては、自己組織的過程は定常への接近によって実現されるわけではなく、絶えず分岐を繰り返すカオス的遍歴によって形成される。こうした観点からすると本質的に複雑系である人類の経済システムが次のシステムに徐々に軟着陸できる可能性はきわめて低いと思われる。自然や経済外要因による摂動が経済システムのカオス的分岐の引き金になる可能性が高いのではないか。それが、気候変動か原発事故などの人災か、核戦争の勃発かは不明であるが、こうした”偶然”の出来事にドライブされた分岐に際しては、現実的な軟着陸処方銭よりは、原理的(ラディカルな)未来の経済システムの基本骨格(アトラクターの特性)の提起と議論こそ問われているのではないだろうか。
しかし、現実の世界を見ると、ポスト資本主義は必ずしも定常型社会とはならないような気もする。エネルギーが絶えずフローする散逸構造においては、自己組織的過程は定常への接近によって実現されるわけではなく、絶えず分岐を繰り返すカオス的遍歴によって形成される。こうした観点からすると本質的に複雑系である人類の経済システムが次のシステムに徐々に軟着陸できる可能性はきわめて低いと思われる。自然や経済外要因による摂動が経済システムのカオス的分岐の引き金になる可能性が高いのではないか。それが、気候変動か原発事故などの人災か、核戦争の勃発かは不明であるが、こうした”偶然”の出来事にドライブされた分岐に際しては、現実的な軟着陸処方銭よりは、原理的(ラディカルな)未来の経済システムの基本骨格(アトラクターの特性)の提起と議論こそ問われているのではないだろうか。