資本主義・社会主義・民主主義 の感想

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タイトル資本主義・社会主義・民主主義
発売日販売日未定
製作者J.A. シュムペーター
販売元東洋経済新報社
JANコード9784492370797
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門

購入者の感想

 先ずはマルクス学説を紹介し、その欠点や卓越した推論等を議論します。そして、マルクスが経済的理由からではなく労働者階級の反逆によって資本主義は終焉を迎えると予想したのに対して、著者は資本主義はその非常な成功故に終焉を迎えるという、理由は異なっても同じ結論に到達します。

 資本主義が非常に発展した段階では、創造的破壊(革新)は自動化し、経済発展の原動力である革新を行う企業家の仕事は、日常的業務となり公的機関によって行われるようになる。また、1)企業家の高い社会的地位を公的機関から擁護するような強力な支持層を企業家は有しない、2)大企業が中小企業を追い出す結果、企業資産はますます株式に置き換えられ、企業の所有権すなわち私有財産に対する企業家の執着は希薄化する、3)企業家が資本主義によって強められた功利主義の薫陶を受ける結果、企業家の家族動機は衰退し、子孫の生活まで考えが及ばず、自分の人生の期間だけを考えるようになり、稼ぎ、貯蓄し、投資するという機能を果たすことに昔ほどには熱意を示さなくなる、等の理由により企業家は活動の場を公的管理下に置かれ、資本主義は終焉を迎え社会主義に取って変わると推論します。

 資本主義崩壊後の社会主義の壮大な様相も考察しています。それは経済活動が公的機関によって運営されますが、資本主義と比較して経済的能率は低くくはなく、むしろ効率的である社会です。また、その社会主義はある条件の下で民主主義的でありうると主張します。本書において興味深いのは、著者が公的機関によっても経済を発展させる創造的破壊は起こると考えており、現代の経済学者とは反対の見解である事です。また、民主主義的方法で運営される社会主義が、資本主義よりも優れている可能性を示唆している事です。社会学、心理学、政治学、歴史など幅広い知識を基に深く考察された経済社会論であり、その壮大さに圧倒されます。

資本主義は、その成功ゆえに失敗する、という一文で有名なシュンペーターの大著。

資本主義は独占に向かうが、それは資本主義の失敗でも不調でもなく、むしろ自然であり成功へと向かっているのだと論ずる。
なぜなら、その独占・大企業化をしない限りイノベーションは起こせないからである。

しかし、経済的成功は自らを生活に満足して安泰になろうとしてしまうので、起業家精神がどんどん減少していく。
経済発展後の起業家は平和な社会の軍隊に相応するのである。
ここからだんだん社会主義に転落していく。

個人的には、シュンペーターの独占に関する議論は非常に面白かった。
独占へのネガティブイメージを逐一反論していくのは目から鱗であった。

シュンペーターは民主主義についても論じているが、「民主主義では国民の意見を代表するものが統治する、というのは誤りである」という指摘は鋭い。
統治者のインセンティブとして人民の支持を得るのが重要にするシステムこそが民主主義のカギであり、意見の代弁云々は政治家の言い訳にすぎない。
シュンペーターが民主主義をここで書いているのは、社会主義と民主主義のつながりに必然性や連関性があるかを論ずるためだろう。
結果としては、特に関係がないのだが。

あと、ネットのような競争的な市場であれば、よりイノベーションが起きているという現実は、シュンペーターの予言を裏切っているといえよう。
資本主義は不況などになるたびに危機にさらされるが、そのたびしぶとく生き残ってきているのも、やはり人間は底なしの欲求を持つがゆえに決して社会の完全な経済的成功もないし起業家精神も衰えないということなのだろうか。

最後に目次を載せておく。

第一章 マルクス学説
予言者マルクス
社会学者マルクス
経済学者マルクス
教師マルクス

第二章 資本主義は生き延びうるか
総生産量の増加率
資本主義の評価
創造的破壊の過程
独占企業の行動
禁猟の季節

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東洋経済新報社から発売されたJ.A. シュムペーターの資本主義・社会主義・民主主義(JAN:9784492370797)の感想と評価
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