マーラー〈没後100年総特集〉 (文藝別冊) の感想

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参照データ

タイトルマーラー〈没後100年総特集〉 (文藝別冊)
発売日2011-04-21
販売元河出書房新社
JANコード9784309977508
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購入者の感想

目次を開いたときに引き起こされた既視感に一瞬混乱させられた。わが国前世紀末のいわゆるマーラー・ブームの始まった頃出版された,青土社「音楽の手帖」シリーズのマーラー篇(1980)に目次のレイアウトが酷似しており,一部執筆者まで共通しているのである。同書は,その後多く出版された同種の物の中でも有用な情報が比較的多く,今日改めて読んでみても教えられる部分がある。この本は,同書の良さを現代に再現しようとしたかのようだ。ページ数の制約もあり,決して凌駕はしていないものの,楽しめる読み物になっていると思う。

吉田秀和,柴田南雄,村井翔,長木誠司,岡田暁生といった,著名執筆者のエッセイが並び,渡辺和彦,伊藤乾,小沼純一,松木篤也などの顔ぶれの曲目解説,ディスク紹介も一部テンションの低い執筆者(上記以外の誰か)を除きそれぞれに読ませる。なんと言っても面白いのは,片山杜秀のインタビューで,私はモーリス・アブラヴァネルのマーラー演奏についての良い評価を初めて読んだ気がする。関連作曲家としてブルックナーにも話が及ぶが,その音楽とミニマル・ミュージックとの関連,その例証としてそれ系指揮者のD.R.デイヴィスが交響曲全集を録音したことの指摘なども,目からウロコであった。

逆に面白くないのが,『音楽の手帖』と『マーラー事典』(1989)から再録された二つの対談だ。両者とも,さほどマーラーに関心があると思えない著名人が,もっともらしい話を馴れ合いで垂れ流すばかりでイラっと来る。かつての「マーラー・ブーム」と後を追って流行した「ポスト・モダン・ブーム」の,表層的で軽薄な面を暴露するための再録,と見るのはうがち過ぎではあろうが・・・。

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