A Writer's Notebook (Vintage International) の感想
参照データ
タイトル | A Writer's Notebook (Vintage International) |
発売日 | 2009-12-01 |
製作者 | W. Somerset Maugham |
販売元 | Vintage |
JANコード | 9780307473196 |
カテゴリ | » 洋書 » Formats |
購入者の感想
この後に作者は作品らしい作品を書いたのでしょうか。といってもいいほど素晴らしいswan songです。もっとも作者の他の作品に触れたことがない人にどの程度この世界が味わえるかどうかは疑問ですが。余裕のない人はprefaceとpostscript (351ページ以降)を読むだけでもいいのではないでしょうか。このpostscriptは見事なまでの出来栄えです。おそらくこの部分を十分に味わうには、年齢の積み重ねが必要です。大学入試のための英文解釈の参考書に取り上げるようなやわな文章ではないのです。そこには英語の修飾と想像もつかない豊富な経験が凝縮されているのです。もっとも作者のことですから、最後まで演技をして楽しんでいるのかもしれません。中身は1892年から1944年までの様々な未発表(?)のスケッチのcollectionです。その中にはシオラン顔まけのaphorismも数多く含まれます。もっともpostscriptは1949年の執筆のようですが。ここには様々な題材が生のままさらけ出されています。第一次大戦前の光景。作者の恥ずかしくなってしまうほどの風景描写。医者としての第一次大戦での従軍。二月革命後のロシアでの暗躍(savinkovが何度もでてきます)。ハワイ、南太平洋、南米のフランス植民地、ボルネオ、マレー、ジャワそしてフランスの炭鉱など様々な訪れた場所。その中には作者の小説の題材とはならなかったインドも含まれます。最後に浮かび上がるのは、19世紀の宗教が背景に退くなかで見事に激動の時代を生き抜いたパーソナリティです。いまだにつまらない世俗的な価値にとらわれて社会からの退場が精神的にできない団塊の世代にはぜひ一読していただきたい作品です。この本が2009年の最後の読書だったというのは私にとっても意義深いものでした。