自分とは違った人たちとどう向き合うか ―難民問題から考える― の感想

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タイトル自分とは違った人たちとどう向き合うか ―難民問題から考える―
発売日2017-02-23
製作者ジグムント・バウマン
販売元青土社
JANコード登録されていません
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 福祉 » 社会福祉

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 ジグムント・バウマンのStranger at Our Door(2016)を邦訳した1冊です。最新の1冊ということで、欧州全土を揺るがしている移民問題や、アメリカで誕生したトランプ政権など、最近の世界事情をもとにした考察がなされています。なお、著者のバウマンさんは残念ながら今年の1月に亡くなられました。個人化社会の進行や社会を覆う不安について多くの著作がある彼が現代社会に残した「遺言」とも言えるかもしれません。その意味でも、手に取る価値のある1冊と考えます。

 移民が非人道的な扱いを受けているにもかかわらず、彼らへの同情が広がらず、彼らを排斥するような過激な主張が支持を集めています。なぜ、市民がそのように「残酷」になれるのか。著者が指摘しているのが、「移民の非人間化」(4章)です。あるカテゴリに属す人々を道徳的な義務の領域から除外する「道徳的義務の領域の縮小」により、無関心化の領土が拡大しています。その結果、「後戻りできないほど深く『われわれ』と『彼ら』に分断されてしまった世界」が訪れようとしている、というのです。

 バウマンは、恐怖心は「具体的な敵」と結びつけることによって耐えやすいものになる、とも述べています。個人化社会、業績主義社会が進行することによって生じる不安が、現状では移民という「具体的な敵」に結び付けられていることは想像に難くありません。彼のいう、「道徳性を眠らせておく」という行為(=無関心)ほど恐ろしいものはないと再認識させられます。無関心こそが、何よりも残酷で、私たちに恐ろしい選択をさせてしまうような最大の恐怖なのではないか、と感じました。

 語られているのは欧米の現状ですが、社会を覆う「漠然とした不安」というのは日本にも押し寄せている波ではないかと思います。無関心の拡大や過剰な他者排斥、そういったものに漠然とした不安を感じ始めている方にはぜひ手に取っていただきたい1冊です。抽象的な記述が多いものの、不安の正体を知るための手がかりになる1冊だと思います。

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