隋唐帝国 (講談社学術文庫) の感想

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タイトル隋唐帝国 (講談社学術文庫)
発売日販売日未定
製作者布目 潮風
販売元講談社
JANコード9784061593008
カテゴリ »  » ジャンル別 » ノンフィクション

購入者の感想

1〜6章までを布目氏、7章から11章までを栗原氏が担当している。
1〜4章はそれぞれ煬帝、太宗、則天武后、玄宗といった、この時代の主役たちや周縁国家について。
5章では律令制、6章では長安の都市構造などが主に語られる。 
布目氏の特徴として、内容が精細で、たとえば政治史なら、年次はもちろん普通なら省かれるような脇役まで明記してある点だろう。
一般書にしてはやや辟易するぐらい細かいとおもうww

個人的には、律令制の崩壊をたどった後半が興味深かった。
藩鎮に関する記述も詳しいが、より印象されるのは農民たちの悲惨さ。
この時代、かれらの主観にたった記録というのは無いのだろう。
だが行政側の資料によって、その窮乏のさまが知られる。
たとえば、
「逃戸」「客戸」「疲人」「破県」「破邑」「貧防」「単貧戸」「背軍」「浮人」「浮奇戸」
こういった単語を並べるだけで、それは明らかだろう。

浮かんでくるのは、あらゆる負担が下層民ほど重くのしかかる社会。
租庸調のほか、戸税や地税(義租)、青苗/地頭銭、政府による塩の専売、庶民のための義倉が流用され、その輸送費まで負担させられる有様。
新たに実施された両税法も、かれらの貧窮の抜本的改善には寄与せず、逆に貨幣価値に換算して納税せねばならぬ方式下でのデフレ、相次ぐ増税。
さらには対藩鎮勢力の経費を捻出するための理不尽な臨時徴収。
これでは体制がもつはずないww
康全泰、裘甫、ホウクン、黄巣と、唐末の叛乱は着実にその規模、地域、階層を拡げ、それでも唐朝は有効な手を打てぬまま、滅亡へと向かう。

たしかに唐朝は世界帝国とも謳われる繁栄を誇った。
だがその陰で、苦しむ人々が無数にいた。
そんな唐朝の暗部が必然的に想起される内容であろう。

しかし中国歴代王朝の衰亡はつくづくパターン化している。
宦官や外戚による専権にはじまり、私権化、腐敗、権力闘争、クーデター、農民反乱、軍閥勃興、滅亡へ。
その原因を敢えて現代的に解釈するなら、国家の意義の喪失であろう。

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