いのち の感想
参照データ
タイトル | いのち |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 瀬戸内 寂聴 |
販売元 | 講談社 |
JANコード | 9784062208789 |
カテゴリ | ジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 |
購入者の感想
「二人は私を自分たちのライバルなんて考えていない、私もそのようにふるまってきたけれど、誰の仕事が残るかはまだ、誰にもわかりませんよ」という箇所が心に残った。
大場みな子も河野多惠子も、純文学作家として優れた作品をのこしたけれど、
果たして今、この時代を生きる人々が求める文学だろうか、と考え込んでしまった。
そして未来に、また違った角度から再評価される機会があるだろうか、とも。
早々に対幻想を捨て、出家してのちも一層華やいだ存在になった寂聴さんの、
作家としての矜持が伝わってきた。
大場みな子も河野多惠子も、純文学作家として優れた作品をのこしたけれど、
果たして今、この時代を生きる人々が求める文学だろうか、と考え込んでしまった。
そして未来に、また違った角度から再評価される機会があるだろうか、とも。
早々に対幻想を捨て、出家してのちも一層華やいだ存在になった寂聴さんの、
作家としての矜持が伝わってきた。
NHKのニュースで発売を知って、寂聴さんのコメントがあまりにも素敵だったのですぐに書店に走り、その面白さにあっという間に読了した。僧侶としての著者しか知らない私にはには少し意外だったが、本書で深く印象に刻まれたのは、がん手術後も消えない痛みを呪い、老いによる衰えを嘆き、愛した男にも親友にも先立たれ、間近な死と向き合う一人の女性作家の姿である。いわば笑顔の寂聴さんからは見えない影の部分だが、そんな苦しみを越えてたどりついた、今の「いのち」がググッと胸に迫る。
出てくる女流作家たちの名前にあまり馴染みはなかったものの、個性的な小説の登場人物だと思えば、苦もなく楽しめた。実際にリアルな部分と創作の部分の分け目も感じることなく、物語は軽やかに進んでいく。そこに作家同士のどろどろした人間関係や特異な夫婦関係も赤裸々に描かれるが、読後感がなんとも清々しいのが著者の筆力であり、人間力だろう。最後を締めくくる一行「…あの世から生まれ変わっても、私はまた小説家出ありたい、それも女の」はひどく感動的だ。日本の宝とも言える著者の渾身に力作であり、皆にぜひ読むことを薦めたい名作だ。
出てくる女流作家たちの名前にあまり馴染みはなかったものの、個性的な小説の登場人物だと思えば、苦もなく楽しめた。実際にリアルな部分と創作の部分の分け目も感じることなく、物語は軽やかに進んでいく。そこに作家同士のどろどろした人間関係や特異な夫婦関係も赤裸々に描かれるが、読後感がなんとも清々しいのが著者の筆力であり、人間力だろう。最後を締めくくる一行「…あの世から生まれ変わっても、私はまた小説家出ありたい、それも女の」はひどく感動的だ。日本の宝とも言える著者の渾身に力作であり、皆にぜひ読むことを薦めたい名作だ。