それでもこの世は悪くなかった (文春新書) の感想

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参照データ

タイトルそれでもこの世は悪くなかった (文春新書)
発売日販売日未定
製作者佐藤 愛子
販売元文藝春秋
JANコード9784166611164
カテゴリ文学・評論 » エッセー・随筆 » 著者別 » さ行の著者

購入者の感想

対応も迅速で 商品もたいへん綺麗でした。満足いく買い物をできました。ありがとうございました。

評判の書だが、一読、(昔からのファンである私にとっては)佐藤愛子のエッセイとしては上品かつ慎まし過ぎるという印象を受けた。確かに、格言の様な題名の各節では破天荒なエピソードが綴られているし、その内容は深みのある正論ではあるが、著者の器の大きさはこんなものじゃない。出版社の意向なのか、随分抑えた筆致になっているのである(これでも)。

兄のハチローが上野で裸になって暴れた事は書いているが、自身が北海道の別荘内で裸でうろつき回り、地元の人から"熊"と間違えられた話は書かない。新幹線と比べた昔の特急列車の遅さに言及するが、そのトイレの余りの汚さに怒り、「汚いトイレでするオシッコの勢いはスゴイねぇ~」、と叫んだ事は書かない。借金まみれになった事は(当然)書いているが、「戦いすんで日が暮れて」程の壮絶さは伝わって来ない。良家の子女である事は書いているが、(謙遜だと思うが)当時の灘中(現在の灘高)の男子生徒の憧憬の的だった程の可憐な美少女だった事は書かない。その灘中の遠藤周作氏との「初恋談義」は「藪の中」であるが。これらのエピソードを加えた方が本書に更に奥行き・アクセントを与えて、よりインパクトの強い書になったと思うのだが。そして、良く読むと、各節、各章、そして本書全体の起承転結が整然と取れていて、端正かつ含蓄のある創りとなっているのである。昔からのファンにとっては、「抑制の効いた佐藤愛子」とは想定外だった。

一方、本書(あるいは最近の他の著作)で著者を知った方にとっては、抱腹絶倒のエピソードを含んだ箴言と呼べる貴重な人生訓になっていると思う。特に本書の後半は笑いが影を潜め、真摯な人生論・価値観論になっている辺りが読み応えがあるのではないか。そうした方には著者の昔の作品の一読をお薦めする。その後で本書を再読すると、著者が如何に人生・文章のツボを心得ているかが得心出来ると思う。いずれにせよ、90歳を越えてなお往年の気概を保ち続けている著者は稀なる先達だとつくづく思った。

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文藝春秋から発売された佐藤 愛子のそれでもこの世は悪くなかった (文春新書)(JAN:9784166611164)の感想と評価
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