悪霊 別巻~「スタヴローギンの告白」異稿~ (光文社古典新訳文庫) の感想

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参照データ

タイトル悪霊 別巻~「スタヴローギンの告白」異稿~ (光文社古典新訳文庫)
発売日2013-12-20
製作者ドストエフスキー
販売元光文社
JANコード登録されていません
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » ロシア文学

購入者の感想

ドストエフスキーの「悪霊」の章「チーホンのもとで(スタヴローギンの告白)」は、内容に問題があるとされ検閲を受けたことから3つの版がある。即ち“ドストエフスキーが最初に編集部に送った原稿と同一視してよい(p12)”「初稿版」、これにドストエフスキーが訂正を行った「ドストエフスキー校版」、アンナ夫人が清書した「アンナ版」p10-11。本書には「悪霊」の初校ゲラの写真p88、172、アンナ版の写真p258が掲載されており、ドストエフスキーの校閲がどのようなものであったのかがわかる。この部分の内容は理解が困難なので全ての版を読んでおきたいところなので、亀山郁夫の光文社古典文庫を購入した人は「初稿版」を亀山は用いているので本書は参考になるだろう。一方、江川卓訳の新潮文庫版では、「スタヴローギンの告白―チホンのもとにて」は下巻の巻末に101ページにわたり詳細な注を伴って掲載されている。ここでは“「校正刷版(初稿版)」をテキストとして採用し、それにドストエフスキー自身が手を加えている部分を注の形で示す(つまり亀山の「ドストエフスキー校版」)と同時に、アンナ夫人の筆者版(つまり「アンナ版」)のテキストの訳を収録した(新潮文庫「悪霊下巻」p641)。このように新潮文庫では3つの版がすべて掲載されており、しかも異同がコンパクトにわかりやすい。一方、亀山版は重複部分もすべてプリントアウトされているため、3つの版のほとんどの部分が重複しており無駄が多く、三つの版の比較がしにくい。亀山の総ページ数が360ページで、これを単純に3で割れば120ページということになるので、亀山版と新潮文庫版に含まれる情報量は同じといってよい。ところが、亀山が本書の巻末で“本邦初訳となる初稿版p358”としているのは誤りと言わざるを得ない。また本書の帯に“世界初!3つの「告白」を同時収録”と書いてあるのも誤りで、既に新潮文庫版で同時収録されている。本書は最初の85ページに「告白」の検閲・出版の経緯、少女凌辱の解釈p68、単行本にさいしての変更(悪魔がスタヴローギンを訪問する場面の削除p50)、スタヴローギンの少年時代の自慰p62、スタヴローギンの姓の語源は「十字架」p73などについて書かれているが、「告白」を理解する上で難解なチーホンのセリフの解釈などについては解説がなされておらず、「告白」の深い理解には繋がらな

「スタヴローギンの告白」は、『悪霊』のなかの一章であり、当時は、編集者によってこのままでは発表できないと言われ、ドストエフスキーは妥協し書き換えたものの、結局は削除され収録されなかった。なんのことはない、少女への性的虐待が書かれているのだが、今読むと別段大した内容でもないのだが……、その「スタヴローギンの告白」には、いくつかの版があり、この本には校正版と修正版、それに夫人が清書したという夫人版の三つを収録し、それぞれの違いをブロック体などで分かり易くするなどの工夫が見られる。こういった本は、本来は全集でしか読めないものなのだろうが、よく光文社古典新訳文庫も出版したものだと思う。

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