マルタの鷹〔改訳決定版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫) の感想

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参照データ

タイトルマルタの鷹〔改訳決定版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
発売日販売日未定
製作者ダシール ハメット
販売元早川書房
JANコード9784150773076
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 英米文学

購入者の感想

 本書の最大の魅力は,なんと言っても主人公サム・スペードという存在感溢れるキャラクターを創出したことにあるでしょう。
 著者ダシール・ハメットの前書きによれば,サム・スペードにはモデルはいないとのこと。
 著者自身私立探偵として得た知識と経験を元に,多くの探偵がこうありたいと願った男,少なからずの探偵たちが時にはうぬぼれてそうありたいと思いこんだ男だといいます。
 著者にとって理想の探偵とは,博識ぶって謎をとく人物ではなく,いかなる状況でも身をもってくぐりぬけ,犯罪者であろうと,依頼人であろうと,関わりをもった相手に打ち勝つことのできるハードな策士であろうと望んでいる男なのです。
 探偵サム・スペードは言います。
「誰が誰を愛していようとしったことじゃない。こけにされるのはごめんだ」
 個人的に面白いと感じたパートとして,スペードが依頼人の女性オショーネシーに,なんの前触れもなく,実際におこったある物語を話し出す場面があります。

 ある恵まれた不動産屋が,昼食をとりに出て行ったまま,それっきり帰らなかったという話だ。夫婦仲はうまくいっており,蒸発するような理由もないのに,二人の幼い子どもたちや新車もおいたまま突然消えてしまったのだ。その妻から捜索の依頼を受けたスペードが,男を見つけ,失踪した理由をきくと次のような内容だった。男の目の前に突然空から鉄骨が落ちてきた。ほんの少しずれていたら即死するところだった。その瞬間,人間はそんなふうなでたらめな偶然によって死んでしまう,そんな偶然から逃れている間だけ生き延びられる,そんなことが分かってしまった。人生なんてものは落ちてくる鉄骨によって無差別に終止符を打たれてしまう。ということは,ひょいと姿を消すだけで人生を変えることだってできるのだと。

 この話は一見本筋とはなんの関係がないようにも思えますが,注意してよく読むと深い意味があるように思われます。スペードには,さらりとこういった話ができるような魅力もあるのです。

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早川書房から発売されたダシール ハメットのマルタの鷹〔改訳決定版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)(JAN:9784150773076)の感想と評価
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