ツチノコの民俗学―妖怪から未確認動物へ の感想
参照データ
タイトル | ツチノコの民俗学―妖怪から未確認動物へ |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 伊藤 龍平 |
販売元 | 青弓社 |
JANコード | 9784787220295 |
カテゴリ | ジャンル別 » 人文・思想 » 文化人類学・民俗学 » 文化人類学一般 |
購入者の感想
まず感心したのは、参考文献の豊富さである。各章の末尾に並んだ文献を見ると、これはもう論文のレベルと言えるぐらい層が厚い。だから、色々な点で論証に使われる知識も、数自体が多くて多方面、引用や紹介の流れが自在な感じさえある。それと、文に漂うさり気ないユーモアが好ましい。だから私には、読み物として第3章「『逃げろツチノコ』を捕まえる」が最高だった。何しろこの章では、ツチノコブームの着火者・山本素石氏に関する、人物および人生上の吟味さえ__伊藤氏は、それは本来好きではない、とのことだが__行っているので、技術不足だと嫌味な内容になりかねなかったが、それを見事に回避出来ている。ユーモアがあれば、分析や柔らかい批判も無理なく活かせるのだな、と思った。一方、知識の豊富さゆえと言うべきなのか、議論・主張の方に、幾らかの混乱もまた見られる様に感じる。第1・2章の、「ツチノコの正体」と「ツチノコ談義」である。ツチノコに近い妖怪が多過ぎるような、概念の普遍化__と言ったら大袈裟かも知れないが__みたいな読後感があった。例えば、「われわれが知るツチノコの形態は、見ようによっては蛇の頭に直接尾が生えたものといえる」の言葉。私にはむしろ、”太短い胴体”あってのツチノコに思えるので、「頭に直接尾が生えた」姿で、だから魂の住処である頭が独立して飛ぶのがどうしてこうして・・・この辺はちょっと抵抗がある。まあ、何でも誰でも完璧ばかり求めるなんて勝手過ぎるから、やはり褒めるべき点が圧倒的に多い、勉強になる名著だと強調しておきたい。