樹上のゆりかご (角川文庫) の感想
参照データ
タイトル | 樹上のゆりかご (角川文庫) |
発売日 | 2016-04-23 |
製作者 | 荻原 規子 |
販売元 | KADOKAWA/角川書店 |
JANコード | 9784041037201 |
カテゴリ | 文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » あ行の著者 |
購入者の感想
高校生活は,曲折がありすぎる故に忘れ難いけれど,辛いことも多くて思い出の取り扱いが難しい.この作品は作者の都立辰川高校2年時代を愛惜をこめて語り直したものだが,余りにリアルに書けていて,ぼくの鍵を掛けて置いた筈の思い出を引出されてしまい,涙なしにはすまなかった.しかしぼくの高校より40年も古い創立を誇る辰高は,それなりの奇怪な伝統を(よくもここまで)保存して,それによって生徒の士気を高めているのに心底驚いた.しかしこれを可能にするにはタイトルに象徴される微妙なバランスが常時要求されるのは当然で,突然崩壊するとしても不思議ではない.作者はこの崩壊を目の当りにして,強い危機感をもってこの楽しそうで実は悲しい挽歌を書いたものと思われる.書いて下さって有難うを申し上げたい.涙の出るほどの回想録というものは滅多にないから.ただ,きょう辰川高校らしき高校のサイトを尋ね,ほぼこの本通りの行事を生徒達が楽しんでいるのを見た.復活もまた必然だと思う.