ロード・エルメロイII世の事件簿3 case.双貌塔イゼルマ(下)【書籍】 の感想

幻想的な魔術ミステリ「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」シリーズ、第3巻。ただ、今回は2巻とあわせて1つの事件を描いているので、彼が紐解く事件としては2つ目です。この事件としてはひとまず今回で完結します。

冒頭の序章から一気に物語の世界に引きつけられました。2巻の序章を読んだ時にも感じましたが、Zeroからのウェイバーのファンとしては、よくぞ書いて下さいましたと、この序章だけでも感謝の言葉が溢れてきます。

本編は文句なく一流のエンターテイメントです。魔術と時計塔に関する詳細な掘り下げあり、謎解きあり（ただし、本格ミステリとは少し違います）、アクションあり、魅力的なキャラクター達のコミカルかつ胸が熱くなるやりとりあり。最後までページをめくる手が止まらず、一気に読み終えました。Fateシリーズだけでなく、他のtype-moon作品との絶妙なリンクもあり、思わずニヤリとさせられました。

そして、今回、ロード・エルメロイⅡ世の内面にかなり踏み込んだ描写もあり、それが作品として1つの鍵になっていると感じました。物語終盤、彼が居並ぶキャラクター達にある「提案」を持ちかけるシーンは衝撃的でしたが、読み進めるとその決断に至った心境も推察することができ、深い感銘を受けました。

そしてなにより終章が素晴らしいです。悲しくも優しいエピローグであると同時に新たなる物語の幕開けを予感させるワンシーンに、その旅路が報われますようにと祈らずにはいられません。

シリーズはまだ続刊、これからも追いかけていきたい作品です。