「やりがいのある仕事」という幻想 (朝日新書) の感想

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参照データ

タイトル「やりがいのある仕事」という幻想 (朝日新書)
発売日2013-05-10
製作者森博嗣
販売元朝日新聞出版
JANコード9784022735027
カテゴリ »  » ジャンル別 » 文学・評論

購入者の感想

タイトルを見て、最初の数ページ立ち読みして、個性的な主張のように思われたので、買ってみた。人は働くために生きているのではない、仕事が人間の価値を決めるのではない、仕事をしなくても基本的人権は尊重される、職業に貴賤はない、仕事の違いは役割の違いでありそれは収入に反映されていてそれだけのこと、無理に働く必要はない、辛いことがあればそのゲームから降りればいい、楽しくてしかたがない仕事なんて無い、といったことが書いてある。

しかし、よく読んでいくと、結局多くの人は食い扶持を得るために働かなければならない、自営業はリスクが大きいし犯罪もギャンブルも割があわないし、将来が不安ならその分稼いで貯める、人生のやりがいは与えられるものではなく自分でつくるもの、というようなごく当たり前のことがたくさん書かれてあることに気づく。医師や弁護士なんていうものならともかく一般的な資格であれば学歴にこだわった方が有利とか、周囲や世間ではなく自分の価値観で未来を見据えて好きな道を選ぶべきとか、働いてお金を貯めて自分の好きなことに使えばいいとか、一度辞めればスタートラインから下がったところからの再チャレンジになるとか、著者の主張もそれは著者個人の意見でしかないという、一見ズバズバ歯切れよく自分の考えを書いているように見えるのだが、苦情が出たときには、別のページにこう書いてあるじゃないかと言って逃げられそうなこともたくさん載っており、全体で見るとごくありきたりな見解から外れない範囲に収まっている。そもそも、資本主義の社会で生きていくためには何らかの方法でお金を得ないと難しいという制約からは逃れられないのだから、どんなに考え方や言い方をズバズバ歯切れよくしてみたところで、しょせんはこの程度という見方もできる。

個人的には、いつも他人にぺこぺこして嫌になったという相談に対する著者のアドバイスは、この手の回答としてはなかなか見事だと思った。ただ、それ以外の点では、表面的に刺激的な言葉を交えて書かれてはあるものの、その中身としては全体的に特別なものではなく、タイトルと最初の部分を読んで期待したほど斬新な内容ではなかったかな、というのが正直なところだ。

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