生徒に『私はできる! 』と思わせる超・積極的指導法 の感想

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参照データ

タイトル生徒に『私はできる! 』と思わせる超・積極的指導法
発売日販売日未定
製作者長谷川博之
販売元学芸みらい社
JANコード9784905374411
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 教育学 » 学校教育

購入者の感想

本書は、著者が中学教師としてどのように生徒を指導してきたのかについて、具体的に記したものです。ここで言う「指導」とは、授業に集中しない生徒への声のかけ方、部活動の指導方法、学校行事の運営方法、学内外での「問題行動」(いじめや暴力行為など)への対応、保護者との付き合い方など、実に多岐にわたっています。本書の記述スタイルは、1著者自身の記した実践記録、2著者の知り合いによる著者の授業観察記録、3質問・解答形式での生徒指導の要点整理、の3つに分かれています。

本書のすばらしい点は、長谷川氏が自らの実践について具体的に記している点です。「2013年9月、体育祭直前・・・」「2010年度、私は中学3年生を担任しつつ・・・」「20××年、3月24日(金)、卒業式の答辞。・・・」。こうした記述の後に、何が起きて著者が何を感じたのか、実際に何をしたのかについて、くわしく書かれています。

著書の掲げている生徒指導の原則は、それだけ見れば「当たり前」のことです。「子どものセルフエスティーム(自己肯定感)を高く保つことが何より重要だ」「授業ですべての生徒に光をあてる」「スピードこそが信頼感を生む」「本物の『小中連携』を目指す」「教師は授業で勝負する」「事実を基に物を言う」などなど。ただし、著者はこれらの原則に関して、「自分はこのように取り組んだ」という事実を示しています。その点が、きれいな原則を「お題目」のように説いている教育書との大きな違いです。

また実践を詳しく報告する形でありながらも、ポイントを絞った書き方がされているため、とても分かりやすい内容になっています。要点は太字にして四角で囲って強調する、「○○のポイントは次の3つである。1・・・、2・・・、3・・・」といった様式を多用しています。エッセー風につらつらと体験談をつづった要点のはっきりしない本とは異なり、読みやすくなるように工夫がなされています。

他方で、読んでいて気になったのは以下の点です。

 本書の「まえがき」には次のようにある。
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基本は「教えて褒める」、積極的な生徒指導なのである。すなわち「教師は太陽であれ」、教師自身が隅々まで分け隔てなく照らし続ける太陽として生きることが、生徒を救う。本書にはその具体的な実践例を多数収めた。
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 多くの実践例が細かく描写されることにおり、著者が関わってきた生徒の姿が浮かんでくる。そして具体的な記述によって生徒がどのように変容していったのかが伝わってくる。読み返す度に生徒との一つひとつのエピソードに勇気をもらい、教育の可能性を信じさせてもらっている。

 読みながら、本に登場してくる生徒と、自分の目の前にいる生徒との姿が重なって感じられる時がある。
◆自分は著者のように「教えて褒める」を貫けているだろうか。
◆「太陽」のようにいつでも明るく笑顔で、一人残らず照らし続けているだろうか。
◆子どもの自尊心を下げるような皮肉を言ったり「教えずに怒鳴る」対応をしていないだろうか。
 読めば読むほど「知っていること」「分かっていること」と、「実際にできていること」とのギャップに気付かされる。そうした点を書き出してみると、実際に自分がどのように関わっていけば良いかが明確になった。どのような書籍を読んで学びを深めていくべきかが明らかとなった。多くの事例に共通する「積極的指導法」を見つけ、自分と比較した結果を書き出していくことが、自己を高めていく第一歩であると感じた。

 他にも、子どもの可能性を信じ続ける姿勢、子どものためを思っての行動の数々には本当に心を動かされた。「教育にベストはない」と言うが、著者は本や研修会で学びながら常に「ベター」を追い求めている。そうして得た学びを自身だけのものとするのではなく、校内模擬授業研修などを開いて教師集団全体の質を高めようと努めている。また、小学校だけでなく、教師がハブとなっての他機関との連携の仕方も具体的に描写してくれている。こうした記述からも、著者が「システム」の重要性を訴えていることが分かる。「あの人だからできる」から「誰でもできる」に変わっていったからこそ、「全校」で「無遅刻・無欠席」という事実が生まれたのだ。

 冒頭から、生徒の自尊感情をいかにして高めるかの具体的な手立てが満載だった。「ささやかな活躍を目にするたびに保護者宛の手紙を認めた。」「授業で一度は必ず丸をつけた。」「いつも同じ言葉を送った。」手立てそのものは、物凄い方法ではないと思う。手品のように、「こうすれば、すぐに生徒はあれから立ち直る」というものではない。しかし、これを継続的に行うことがいかに難しいか、現場にいる教師ならば実感できるはずである。しかも、いわゆる「問題行動を起こす生徒」に対して、である。少なくとも、私にはできていない。教師としての在り方を見直す良いきっかけをもらった。
 また、生徒指導のシステムをどう構築するかについても、示唆に富んでいる。いわゆる「荒れた学校」には、「実力のある教師」が集められ、立て直しを担うことがある。ある程度、立ち直った段階で、「実力のある教師」たちは異動していく。その後、再び荒れた、と言う話を聞いたことがある。「人」に頼る弊害である。それを打破するために、システムが必要である。その具体例も示されている。「いじめ予防・発見・対応・解決のシステム」、「生活アンケート」がそれである。さらには、校内研修で扱われている内容や特別支援コーディネーターとしての役割も書かれてある。これらを土台に、各学校の実態に合わせて仕組みを作れば、「実力のある教師」だけに頼る状況から脱却できる。画期的な内容であると思った。
 そして、筆者の授業や部活動の様子を参観した様子まで載っている。本書で展開されている論が空理空論かどうかは、生徒の姿が教えてくれるのではないか。まさに、百聞は一見にしかず、である。
 生徒に対応するための具体的手立て、「人」に頼らないシステムの例、そして生徒たちのありのままの事実。勇気と元気をもらった。夏休みの自主研修として読んだが、それにふさわしい1冊だった。2学期、子どもたちと会うのが楽しみになった。ぜひ、一読をお勧めしたい。

最初のページから、涙が出そうになりました。
子どもの様子がドラマ以上にドラマだったからです。
そういうドラマがいくつも出てきます。
これは小説なのではないかと疑ってしまいそうになります。
私が一番好きな場面は、長谷川先生の生き方に共感し、変化していったA君がある立候補をする場面です。
合唱祭のことを決めている時に、ピアノ伴奏者の立候補がでません。
沈黙が続きます。
そんな中、A君が、「下手でもいいんでしょ」と言って、立候補します。
A君はピアノを弾いたことがありません。
でも、クラスのために出来ることは何か考え、立候補したのです。
この後、A君の姿に心を動かされた女の子が2人、立候補をしてくれました。
これは、ドラマを超えています。
ドラマを超えた現実を読みたい方にオススメします。

長谷川先生の著書は全て読みました。
荒れた子どもたちとの具体的な闘いの事実から、多くの気づきと勇気をいただいています。
前作の「中学校を『荒れ』から立て直す」もそうでした。
おかげで、昨年度受けもった大変な学級が、半年後にはがらりと変わりました。
子どもたちに「できる!」という体験をいかに保障するかが大切だと実感しました。
大変感謝しております。

今作では、さらに充実した内容に驚きました。
特別支援コーディネーター、生徒指導主任、学年主任、学級担任、どんな立場になっても、この本があればやっていけると思いました。
力のある先生だからできるというのではなく、どの先生になっても一定の水準を保てる「システム」があるからです。
このシステムを共有できれば、全国にいる多くの大変な子どもたちが救われます。

そして、やはり、大変な子どもたちへの対応の仕方が参考になりました。
具体的な対応はもちろん、その対応から感じ取れる子どもへの温かさは、他の場面での対応にも生かすことができます。
目の前の子への対応に煮詰まった時、とても役立ちます。
この本を読んで、効果のある指導の幅が広がりました。

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