ルートヴィヒ デジタル修復版 [Blu-ray] の感想

ヴィスコンティの作品の中で、これだけは昔から大好きであった映画。これまでにＬＤ、ＤＶＤ旧譜（２枚組）、ＤＶＤデジタルニューマスター版（２枚組）と購入してきたが、今回もやはり購入してしまった。ＴＶ放映版日本語吹き替えが初収録されたので、まずはそちらで鑑賞したが、４時間一気に見てしまうほど引き込まれるドラマ。パッケージの説明にもあるとおり、２３８分という長時間にもかかわらず、日本語音声の欠落部分（イタリア語＋字幕に切り替わる）はわずかである。
物語で語られる戦争のシーンなどがないので迫力がなく退屈だという人もいるが、ルートヴィヒは戦争を否定し、王として我関せずの姿勢を貫いたのでそのシーンがないのも納得がいく演出。１８歳で王となり４０歳で亡くなるまでの、不安と孤独、美しい風貌から徐々に破たんし精神を病んでいく様を演じたヘルムート・バーカーの演技も見事だが、崩壊していく様とは正反対に芸術や文化に国費をつぎ込みどんどん豪華さを極めていく凝りようも見事に映像で表している。当然ＣＧなどはない時代なのですべてが本物の美しさ。ＤＶＤデジタルニューマスターと比較しても発色や明るさは各段に向上しており、またブルーレイになったことで１枚なのがうれしい。惜しむらくは、本来の言語であるドイツ語版が収録されていない点だが、解説書によればドイツ語版は国外での使用が許可されていないとか。よって、現状ドイツ語版のきれいな本編を見るにはそれが収録されているドイツ版ブルーレイを購入するしかないようです。
それを差し引いても、今回のブルーレイ発売は素晴らしいこと。定年後もゆったりと何度でも大画面でその映像美に浸りたい作品。