(102)SNOOPYと学ぶアメリカ文化 (ポプラ新書) の感想

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タイトル(102)SNOOPYと学ぶアメリカ文化 (ポプラ新書)
発売日2016-12-16
製作者加藤 恭子
販売元ポプラ社
JANコード9784591151426
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論

購入者の感想

 著者は1929年生まれ。1960年代末から70年代初頭にかけて家族で暮らしたアメリカの生活に照らしながら、チャールズ・M・シュルツ作のコミック『Peanuts』を通じてアメリカ社会を見つめたエッセイといった赴きの書です。

 アメリカのみならず日本でもこのマンガが人気の理由は、スヌーピーの飄々とした愛らしさだけではないでしょう。著者は、このマンガに出てくる子供たちの「傷つきやすさが、表面には出てこないで、そのちょっと下にあり、私たちを惹きつけるから」だと言います。「それぞれの子供が孤独で、自分自身のやり方で戦っているのだということ。矛盾、混乱、無常に満ちた社会の中で生きのびていくためにである。」(33頁)
 さらにはアメリカの読者は、タイプライターで小説を書く犬スヌーピーのことを<独立心>と<自己の夢や希望を実現できる精神>――それはアメリカ人が持ちたいと願うもの――をもった存在と見ているとも指摘します。

 こうした『Peanuts』文化論を、著者は70年代初頭に共にアメリカ生活を送った幼い娘の日々を思い返しながら綴ります。
 『Peanuts』には、自分の家の手伝いをして親からサラリーをもらう子供たちが何度か登場します。著者の娘さんの友達たちもそれが普通のことだと考えています。日本的な感覚からいえばお手伝いに対して金銭的対価を得ようと考えることは<はしたないこと>だと著者は考えますが、アメリカ生活の中で日本的感覚をなかなか身につけられない娘さんは納得しません。娘さんは日米の金銭感覚の違いを著者と議論するうちに、アメリカでは「Finders, Keepers(落とし物は拾った人の物)」であるのが当然だという例を挙げるほどです。こんな言葉があったとは。私も初めて耳にしました。

 残念ながら、著者の体験したアメリカ生活は半世紀も前のものです。1950年に連載がスタートした『Peanuts』をその経験知で論じるのは良いとして、それはやはり戦後の古き良き時代のアメリカ像である点は否めないでしょう。著者が帰国した後、ベビーブーマー世代による社会変革の大波がアメリカを覆ったという歴史を思うと、この『Peanuts』論は少し穏当すぎる気がします。

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