田中角栄と安倍晋三 昭和史でわかる「劣化ニッポン」の正体 (朝日新書) の感想

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タイトル田中角栄と安倍晋三 昭和史でわかる「劣化ニッポン」の正体 (朝日新書)
発売日販売日未定
製作者保阪正康
販売元朝日新聞出版
JANコード9784022736673
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門

購入者の感想

 ・・・意見が合わない者は敵と決めつけて認めようとしない。そんな安倍晋三内閣と自民党の体質を如実に表していると言えるだろう。前川喜平前文部科学事務次官が行った授業内容を報告するよう文科省が名古屋市教育委員会に求めた問題で、自民党文科部会長らが同省に経緯を何度も照会し、質問内容の添削まで行っていたことが分かった。<中文略>自民党では2015年、安倍首相に近い若手議員が開いた会合で、当時の安全保障法制議論に関連して、政権に批判的な報道機関に圧力をかけるべきだとの意見が噴出し、講師として出席した作家が沖縄の新聞2紙を「つぶさないといけない」と発言して大きな問題となった。今回もそれに似ている。自民党の若手は言論の自由が民主主義に不可欠というイロハが分かっていないのではないか。まるで戦前の言論統制への回帰を狙っているかのようだ。<後文略>・・・
 上の・・・内の文章は、2018年3月21日の毎日新聞社説「”前川氏授業に自民が照会”『今の党体質が表れている』」という見出しで掲載されたものの一部を転載したものである。
 本書保阪正康著『田中角栄と安倍晋三』の内容にも通ずる(沖縄2紙のことや放送停止処分を発言した大臣も本書で記述していたから)ので、この社説の一部をレビューに転載したのである。
 著者の保坂氏は、本書のなかで安倍政権の強権政治を批判していた。
 本書が刊行されて二年過ぎた今でも、評者が転載した毎日新聞の社説のような事例が続出しているのである。
 本書のなかの一章で「本を読まない宰相」から下の・・・内に少し長くなるが転載したい。
 ・・・安倍首相の政治理念は、いわゆる戦後民主主義体制とは異なる。なぜなのか。
 安陪は3代続いた政治家の家に生まれた。よく知られているように母方の祖父は岸信介、父は安倍晋太郎である。晋太郎の父・寛も政治家だ。言うなればサラブレットというべきなのだろう。しかしその政治姿勢は自立しているとはいえない。あるいは世代特有の戦争観を持っているようには思えない。戦場に駆り出される兵士の視点ではなく、戦争政策を進める指導者の側の視点であり、それは血族の継承といっていいのではないかと思う。
 その人物像をもうすこし詳しく見ていくことにしょう。

内田樹氏も述べておられたと思うが、安倍首相には論理的論述が極めて稀有で、現実社会を直視せず、安保条約を堅持した祖父を盲目的に信奉し、第二の岸信介を夢想する性癖がある。論理性が乏しいだけに他からの反論に弱く、その弱みを隠蔽するために他社の意見を聞かない。保坂氏は、この点を捉えて、第二次世界大戦の惨劇を演出した東条英機氏とイメージをだぶらせている。そして、大衆社会の幸福に軸足を置いた田中角栄氏と対峙させ、第二次世界大戦が結果として専制政治となったことに深い憂いを示す今上天皇とも対峙させ、阿部晋三氏の首相としての造詣と矜持に疑問を投げかけている。
自らの意見を読者に強要するわけでもなく、安倍首相を完膚なきまでに批判するわけでもなく、淡々とこの先、日本が戦争国家に誘導されていくのではないかと云う憂慮をできるだけ、客観的に思いの丈を示したいと云うひたむきさを感じました。
米国大統領選挙の論戦もおもしろいが、華々しさはないものの、日本の先行きを約100年間の歴史の時間幅で静かに語りかけている本誌は、実に心に沁みました。

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朝日新聞出版から発売された保阪正康の田中角栄と安倍晋三 昭和史でわかる「劣化ニッポン」の正体 (朝日新書)(JAN:9784022736673)の感想と評価
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