安倍晋三「保守」の正体 岸信介のDNAとは何か (文春新書) の感想

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タイトル安倍晋三「保守」の正体 岸信介のDNAとは何か (文春新書)
発売日販売日未定
製作者菊池 正史
販売元文藝春秋
JANコード9784166611157
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門

購入者の感想

 タイトルに安倍晋三とくるので、記者の本にありがちな、薄い現象解説かと思いきや、そうではなかった。岸、吉田時代から始まる戦後保守の変遷を、かなりの歴史的資料を読み込み、新たな取材も織り交ぜて、多角的に検証している歴史書として刺激的だ。現実政治とアカデミズムを融合した挑戦的な内容となっている。筆者は、戦後保守に一貫する底流を「対米協調」これは「対米追随」と言ってもいいが、それと「大衆の欲望」の二本柱でとらえている。「対米追随」つまり「アメリカ支配」のくびきから脱しようとして岸は憲法改正、再軍備を唱え、吉田と政争を繰り広げた。しかし、豊かさと平和を求める「大衆」は、吉田以降、池田、佐藤、そして田中派の政治支配を後押しした。安全保障の面では、皮肉にも、「真の独立」を目指す一つの段階として岸が実現した「日米安保体制」は、「アメリカ支配」をますます強固なものにしてしまった。
 田中角栄の系譜が破たんする中で、「戦後レジームからの脱却」を唱えた安倍晋三に「真の独立」への期待が高まった。右翼勢力は、やれ憲法改正だの、自主防衛だの、中国や北朝鮮に負けない強い国だのと盛り上がった。しかし、実際はどうだ。トランプ大統領にゴルフ接待を受け高揚している姿を見れば、「真の独立」、「独自の世界戦略」どころではないことは、いうまでもない。この書を読むと、結局、「戦後レジームからの脱却」も、戦後抑圧されてきた右バネ勢力をうまく取り込む「夢物語」であり、「毛ばり」にすぎなかったことがよくわかる。
 安倍氏の正体は左翼同様、戦後保守の継承者。しかし、「毛ばり」のさばきは巧妙で、純真な右の方々も淡い期待を寄せながら、高い支持率を支えているようだ。
 アメリカ支配からの脱却という意味では、本当のチャレンジャーは田中角栄だったこともよくわかる。改めて田中の凄みを感じた。それに比べると安倍のスケールは非常に小さい。筆者の皮肉り方も現役記者の則を越えず巧妙。政治との向き合い方を考えるうえで必読だ。

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