ベル-ある伯爵令嬢の恋- (字幕版) の感想

１７６９年、一人の少女が父親であるリンジー艦長に連れられ、美しいハムステッド・ケンウッド・ハウス
を訪れます。少女の後継人としてマンスフィールド卿に委ねる覚悟の訪問でした。
戸惑うマンスフィールド卿とその妻、そして叔母のメアリー。そこには、もう一人の養女・エリザベスが
住んでいました。彼女と共に教育され礼儀を学び、教養溢れる美しい女性へと成長していきます。
その少女の名は「ダイド・エリザベス・ベル・リンジー」。

《ダイドの問題》
・婚外子・・・正式な場所に出られず、家族の晩餐にもつけません。（父親・リンジー艦長、母親・黒人女性）
・黒人・・・・父親亡き後かなりの財産を受け取れますが、彼女の本当に望む婚姻は簡単ではありませんでした。
・女性・・・・当時の女性は男性の所有物だったことと、女性が財産を持っているか否かは大きな問題でした。
　しかし、彼女の美貌と財産に惹かれてオリバー・アッシュフォードが結婚を申し込んできます。

《ゾング号事件》
・英国最大の貿易、奴隷の売買に関して輸送する船舶の言い分と、人命に対する商業保険の支払いの有無が争点。
　それは、英国が今まで利益を上げていた人道に反する貿易を終わらせることにつながります。
　この英国を揺るがす大きな問題を、マンスフィールド卿である英国主席判事の決断に委ねられました。
　深く悩むマンスフィールド卿、養女ダイドのことがいつも頭の隅にありました。
　そこを突いてくる、法律家を志すジョン・ダヴィ二ェ―ル。゛正義を持って世界を変えたい”との志と、
　ダイドを理解し深く愛していました。

この作品は、私の中で消化するまで時間がかかりました。
ダイドがあの時代に、人間としてのプライドを持ちしっかり生き抜いてきたことは称賛に値します。
もちろん彼女だけの力でなく、小さな女の子を立派にモダンに育てあげたマンスフィールド卿・夫妻と
優しいメアリー叔母、彼女のエリザベスへのアドバイス「男性を待たない事」も的確でした。

大変上質な映画で楽しめました。主演の二人のロマンスを通して奴隷制の非道さが伝わり、またあの時代の女性の社会的地位や身分の状況もよく分かり、人間性の本質を考えさせる映画でもあったように思います。