サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福 の感想

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参照データ

タイトルサピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福
発売日販売日未定
製作者ユヴァル・ノア・ハラリ
販売元河出書房新社
JANコード9784309226729
カテゴリジャンル別 » 歴史・地理 » 世界史 » 一般

購入者の感想

宗教とイデオロギー、お金、帝国・国家等様々な概念が共同主観という考え方で把握できることを知り、視野が広がった。

面白かった。
著者から提案される質問が、どんどん変わっていき、歴史のお話から自分の存在意義にまで近付いてくる。
翻訳にはやや不自然なところもあるが、内容が面白いので許容範囲内です。

歴史の枠にはまらない、たいへん読みごたえのある本。人類の今がどのような過程で作られ、今後の可能性を考えることができる。

1. 歴史を見る際の一つの視点を提供してくれる
認知革命、農業革命、科学革命をターニングポイントとする考え方は興味深い。特に認知革命の視点が自分には新鮮だった。認知革命で人類が獲得した「虚構を信じる力」の有無がホモ・サピエンスと他の人類との道を分けた、という視点は新鮮で、この部分だけで自分には十分に読む価値があった。
歴史の見方という点では、ホモ・サピエンスの歴史は統一に向かっているという著者の考え方にはなるほどと感じた。核兵器の存在、経済的な分業・相互依存があるため、一国が独自の考え方で政策を遂行するという19世紀的な考え方から人類は卒業せざるを得ない。

2. 今まで問いの必要などないと考えていた問いをあらためて提示してくれる
農業革命で生産量が増え、狩猟採集から定住に移行したことの良し悪しを著者は論じている。確かに、自然の中で自分の能力で生き抜く力は狩猟採集生活における方がはるかに高い水準のものを要求される。今はホモ・サピエンス全員が分業の輪の中にはまっているので、他人が提供するモノ・サービスがないと生きるのは不可能だ。また、主食を穀物にし、耕作地の近くに集団で定住すると、飢饉・疫病などのリスクに直面する。これは狩猟採集時代には人類が直面しなかったリスク。教科書的には狩猟採集から農耕への移行は良いことだが、本書を読むと今までのホモ・サピエンスの歴史は幸せなものだったのか疑問が生じてしまう。
また、人類の大集団を一つにまとめる道具として本書で指摘されているのが、貨幣・帝国・宗教。これらは自明なものではなく、集団をまとめるための普遍的な秩序である、と述べている。今の人類の行動の根底にあるものも、考えてみれば、この三つに行き着くのではないかと考えた。

3. 歴史を考える際のフレームワーク(仮説)を提示してくれる

上下巻通読して、詰まるところ我々ホモサピエンスとは、どんな生き物なのか。どこへ向かおうとしているのか。
この問いを新たな視点、価値観から 改めて考えさせられた。

世間の通説によると、「昔の人は自然と調和して生きていたが、産業革命後、自然破壊や動植物の絶滅が進んでいる。」
こんな解釈が一般的だが、本書はそうした世間の通説を誤認だと説く。

実際は、サピエンスによる生態系の破壊は7万年前の認知革命以降すでに始まっており、狩猟採集民が拡がって行くとともに各地で大型動物の絶滅第一波が起きた。その中にはネアンデルタール人等、同じヒト属の仲間も含む。
続いて農業革命後の第二波の絶滅。
現在は第三波の大量絶滅の最中で決して近代だけの問題では無い。

中でも70億以上の人口の食糧を支える大規模農業や畜産業は深刻だ。
森林は多様な生態系を維持しているが、農場の拡大はそうした森林を破壊している。
また工業化された畜産業は、数百億という家畜を大量生産品として扱っている。
現代の生物学では牛や豚、鳥類にも心が有るとされているにも関わらずにだ。

とある記事の取材で著者ハラリ氏は本書の執筆がきっかけでヴィーガン(肉や乳製品や卵を食さない人)になったと言う。
乳製品や卵まで採らない理由は、乳牛は常に乳を出すわけではなく、定期的に妊娠させておく必要があり、誕生した子牛は強制的に母親から引き離され太らせて食用にされてしまうという親子の絆を無視した悲惨な現状を知ったからだ。
強制的に卵を産み続けさせられる鶏も同様だ。

著者は、すべての人にヴィーガンになってほしい訳では無いと言う。
中には狂信的なヴィーガンもいて、世間で揉め事を起こす人たちもいるが、それはまた新たな問題を生むと危惧する。
しかし、私たちの繁栄の裏には、そういった多大な命の犠牲が常にあるのだと言うことを読者達に知ってもらい、不幸な家畜が少しでも減少することを願っているようだ。

本書の個人の幸福論の記述において、仏教思想の幸福観を著者は肯定的に捉えている。

「科学革命」の2つのエンジンは、未開地の理解と啓蒙推進の「帝国主義」と、
進歩に基づく信用創造で将来投資に意味を持たせた「資本主義」。
「産業革命」が肉体以外の自在なエネルギー変換を生み出し、新たなステージへ。
産業革命で家族が弱く、個人と国家・市場、「国民」と「消費者」という想像上のコミュニティが強化。
幸福に影響する要因は、富の上昇は一定の水準までで、家族や実在のコミュニティの要素が大きい。
だがむしろ、幸福感は主観的な期待と客観的条件の相互関係。
つまり「持てるものに満足すること」。

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