切らずに1枚で折る 爬虫類・両生類折り紙 の感想

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一筆書きのように、なめらかな折り紙技法を用いた、折り方事典です。
折り畳んで切れ目を入れると、1枚の相称的な網模様などができたりしますが（切り紙）、
ときに切れ目が連続して外部にひらけるなどし、ばらばらになってしまったりしたものです（幼少時）。
また、玖珠球などはなやかな組み折り紙とも違った楽しみ方が可能な点も魅力です。

本書で扱っているのは、1枚の色紙を切らずに幾重にも折り込んでゆくことで、
いくつかの小さな合同形がカニの甲羅のように一定の角度をなして連なり、
最後に紙の余った部分を細長く直角方向に折り出すことで、手足になったりしますから、
けっこう不思議です。つまり、1枚を可能な限り有効利用しながら、リアルで創発的なかたちを再現し、
本物のシルエットそっくりな完成物になってきます。

ふつうのカエルからいろんなヤドクガエルに変身させるところなどは、本書ならではのオリジナルでしょうが、
案外爬虫類とか両生類というのは、水陸にまたがって生息していることからも、
折り紙などのアートで表現しやすい独特な、原初的な連続模様を備え、
むしろそうした界面的な環境への歴史的な適応過程からか、体形に無駄が少ないようにも思え、
本書のような面白い折り紙図鑑での試行をつうじて、生物のかたちへの豊富な感覚も培えるのでは、
とも思います。

因みに、近年生物考古学などの分野で、バージェスやエディアカラなどでみつかっている太古生物のかたちに関して、
化石の断片から元の該当生物の全体像を復元する動きがさかんなようですが、
水中から陸進するに際しても、異なる環境に応じた中間形などが試行的に豊富に現れた時期があるらしく、
それは紛れもなく本書で扱っている多様な爬虫類や両生類のうち現存する種類にも如実であり、
ある意味で進化論を後押しするようなテーマをも示唆し、その点でも興味深くあります。
まずは本書をみながら、気に入ったものを折ってみて、改めてそのかたちを堪能し、折り紙の魅力に迫っていただけたら、
と思います。