お伽草紙 (新潮文庫) の感想

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参照データ

タイトルお伽草紙 (新潮文庫)
発売日販売日未定
製作者太宰 治
販売元新潮社
JANコード9784101006079
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学

購入者の感想

漫画「津軽」のなかに収められていたのが「カチカチ山」で、「へぇー、太宰治って昔話もやってたのか」と興味を持って読んでみた。

本作品は、カチカチ山以外に、瘤取り爺さん、浦島太郎、舌切り雀をまとめて「お伽草子」としているが、やっぱり漫画の通り、戦時中防空壕に隠れたりしながら、いろいろ妄想した成果の作品となっている。「カチカチ山」は確かに子供のときにいくら懲らしめる目的とは言え、殺人という結末に恐ろしい思いをしたのを覚えている。太宰は、それを少女の残酷さがもたらしたものとし、愚鈍な中年のタヌキが身分不相応にも少女に恋をしてしまったばっかりに、必要以上の手痛い仕打ちを受けるという話にまとめているのがおもしろい。自分には、少女の残酷性なるものは理解不能なので、たぶん男気なくブラブラしている太宰が少女からバカにされた痛い記憶がベースになっているのでは?と思う。
その他、浦島太郎も口達者な亀が、これまた太宰自身の投影である浦島太郎と議論するくだりがおもしろい。

この文庫は「お伽草子」がタイトルであるけれども、多くのページは江戸時代の庶民のお話の短編集になっている。「新釈諸国噺」として井原西鶴の話を太宰流に色づけした作品集がとくに面白い。手に負えない怪力男の話「大力」、駆け落ちして貧困生活を始めた若い二人が味わう辛苦「猿塚」、人魚を見たと言ってしまったばっかりにその意地がもたらす悲劇「人魚の海」など、ストーリーとしても非常に面白いが、文章表現の豊かさ、語り口調を話によって切り替える巧みさは、さすがに日本有数の作家の実力を思い起こさせる。

太宰というと、どうでもいいことをクヨクヨ悩んで、読んだところでなんの足しにもならないから大人になったら見向きもしない人が多い(自分もそうだった)けれど、こういう作品を読むと、まるでピカソが普通の絵を描いたときのすごさに感動するような気持ちになった。

ちなみに、古い昔話を世間の現実にあわせて解釈したのが面白いと思われた方には、澁澤龍彦訳のペローの「長靴をはいた猫」をオススメします。こちらはグリム童話ですが、ストーリーは面白いし、澁澤の文章力のすごさも味わえますよ。

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