本格小説〈下〉 (新潮文庫) の感想
参照データ
タイトル | 本格小説〈下〉 (新潮文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 水村 美苗 |
販売元 | 新潮社 |
JANコード | 9784101338149 |
カテゴリ | 文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » ま行の著者 |
購入者の感想
冨美子が全てを語り終わり、物語が終わりを迎えるときに初めてこの物語が始まると言えよう。実際に読み手は二回以上読むことを余儀なくされる。どんでん返しが起こるというわけではないのだが、にもかかわらず終盤になって漸く得られる新しい視点で、本作品をもう一度確かめたいという気持ちが生まれる故に二回目を読まずにはいられない。
冨美子の生い立ちから始まる語りは、冨美子の不遇な人生の寂寥感で一杯である。それだけでも胸が塞がり、目頭が熱くなるのだが、メインは太郎についての話であり、その話もまたやるせないものだ。しかしそれを冨美子が語るからこそなんとも言えない気分にさせられることが後々わかってくる。
本作品は恋愛物語であるが、日本の戦後社会が背景になっている。富裕である重光家や三枝家のような名家の持っていた品格は、現在の富裕族である久保やその兄嫁の両家には少しもない。金持ちになった太郎が日本に帰ってきて「こんな国になるとは思っていませんでした」と呟き、さらに日本人が「希薄」になったと評するのが妙に悲しい。
恋愛そのものだけでなく、日本人の品格や恋愛観についても考えさせられるロマンスである。
冨美子の生い立ちから始まる語りは、冨美子の不遇な人生の寂寥感で一杯である。それだけでも胸が塞がり、目頭が熱くなるのだが、メインは太郎についての話であり、その話もまたやるせないものだ。しかしそれを冨美子が語るからこそなんとも言えない気分にさせられることが後々わかってくる。
本作品は恋愛物語であるが、日本の戦後社会が背景になっている。富裕である重光家や三枝家のような名家の持っていた品格は、現在の富裕族である久保やその兄嫁の両家には少しもない。金持ちになった太郎が日本に帰ってきて「こんな国になるとは思っていませんでした」と呟き、さらに日本人が「希薄」になったと評するのが妙に悲しい。
恋愛そのものだけでなく、日本人の品格や恋愛観についても考えさせられるロマンスである。