影裏 第157回芥川賞受賞 の感想

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参照データ

タイトル影裏 第157回芥川賞受賞
発売日2017-07-28
製作者沼田 真佑
販売元文藝春秋
JANコード9784163907284
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » な行の著者

購入者の感想

 先日、芥川賞を受賞作した本書を読みました。かつて仕事をしていた盛岡が舞台ということで手に取った作品です。小説のオープニングから展開する自然の描写は丹念に書かれ、表現豊かです。方言も(恐らく)忠実に書かれていると思います。ただ、(無知ゆえですが)、読めない漢字がいくつもあり、ルビを振って欲しかった(著者の責任ではなく、編集者の仕事範囲ですが)。辞書を引くことで、しばしば読み進めることが中断しました。
 400字原稿用紙で100枚ほどの短編小説ですが、読むのに時間がかかりました。読めない漢字があるせいもありますが、小説の流れを理解するのがいささか難しかった。著者はこの小説で何を伝えたいのかを分かるために、時にページを戻して読む必要がありました。
 モティーフは3.11とLGBTだと思えますが、この小説でどのような意味があるのでしょう。心にひっかからないまま、読み終えてしまいました。
 特にLGBTのくだりは事情がすぐに理解できず、読むことを止め、考えることになりました。小説なので、説明することは必要ないですが、唐突に突きつけられた感がありました。単に主人公の輪郭を明確にするために書かれたのか。それともそれ以上の意味があるのか。分かりませんでした。
 3.11のことは、小説の流れからは3.11でなくてもいいのでは、と思いました。必然性が感じられない、ということです。
<電光影裏春風を截る>という言葉が小説の終盤部に書かれています。この言葉は(これも無知で知らなかったのですが)禅語のようですが、小説の流れではこれも唐突な印象です。タイトルの「影裏」もここから取られているのでしょう。この言葉の意味を理解しないと、小説そのものも理解できないかもしれません。ちょっとハードルが高いです。
 ありきたりの感想ですが、次回作を楽しみにしたいと思います。

ほとんどの景色がすぐに想像でき目の前に広がる。わりかし簡単な言葉で淡々と進む物語りは読み易い。あえて酷評するとしたら、他作品の良いとこ取りにも思える部分もある。ただ終盤はなかなかグッと惹きつけられる。次回作待っています。地元の1人として。

 序盤の自然描写や安定した話の運びを読んで、上手な文章を書くなと思いました。帰宅した家電の操作や近所の老女の作業から3.11を導入するのも、嫌味が無くケチのつけようがないというのが率直な感想です。
 ですが、本作を手にとった全ての読者は、本作が芥川賞受賞作だという興味にあるはずです。果たして、植字が大きく水増しされて単行本化されたパンフレットの様な本書に、それだけの期待に応えているのか。P70位から盛り上がって、最期に実父の謎解きがある、だが、真相を含めてよく分からない、LGBTもあり、かき乱された読後感が残るのは、受賞作に相応しくないとは言えないでしょう。選考者には、今村夏子を落とした理由があったのかも知れません。
 ただ、新人で、しかも一作、しかも3.11、しかもLGBT、の受賞を決める積極的な理由は本作に見つけられませんでした。あえて言うと、芥川賞的にはトレンドが少し古いかなと思います。90年代にこんな作品あったな、という感じです。3.11やLGBTなど、目新しい材料が散りばめられているが故に、残った読後感は水底に溜まった澱のように、新しい世界を示している様には見えませんでした。

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