コーヒーが廻り世界史が廻る―近代市民社会の黒い血液 (中公新書) の感想

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タイトルコーヒーが廻り世界史が廻る―近代市民社会の黒い血液 (中公新書)
発売日販売日未定
製作者臼井 隆一郎
販売元中央公論社
JANコード9784121010957
カテゴリジャンル別 » 歴史・地理 » 世界史 » 一般

購入者の感想

コーヒーをとりまく視点から、こんなにも世界史が語られ、学校で習ったのとは違う世界史に引き込まれました。最後にナチスの話に行きつき、著者の思いが見えた気がします。

本書は、コーヒーの「起源」から、現代社会における消費まで幅広く論じたもの。

本書では、時代や地域によって変わるコーヒーの様々な役割が語られます。あるときは中世イスラム教神秘主義における神人合一の補助として…。またあるときは、市民たちに革命への機運をもたらす、ヨーロッパ近代社会における「理性」への一助として…。また別のあるときには、現代における先進国と「第三世界」の非対称的な関係を形成した一因として…。コーヒーがどのような役割を果たしたのか明らかにされます。

もちろん他のレビュアーが指摘しているとおり、コーヒーがヨーロッパの植民地主義や市民革命あるいはナチズムと直接的な因果関係にあった、と示唆しているかのような本書の文章は誤解をまねきかねません。しかしながら、そのように実証的な厳密性を棚上げすることは、一見バラバラに見えるかのような世界史における出来事をひとつの視点から線としてつなぐうえでは、すなわちコーヒーを主人公にすえて世界史という「物語」を語るうえでは、やむをえないように思われます(そもそも、そこまで「まじめ」な本ではありません)。
「世界」をひとつの有機的な全体として捉えるために、著者にとってコーヒーほどふさわしい題材はなかったのでしょう。だからこそコーヒーという具体的事物の来歴を物語ることで、一見するとコーヒーとはまったく無関係に見える「世界」を物語ろうとしたはず。つまり本書では、コーヒーにまつわるエピソードが積み重ねられることで、世界史をひとつの「物語」として読むことが意図されています。
本書はそうした物語的思考によって巧みに紡がれた好著です。純粋に読み物として刺激的だし、無類におもしろい。肩肘はらずに読めるエッセイとしてオススメです。

以下は目次。
1章. スーフィズムのコーヒー
  アラビア・フェリックス-幸福なアラビア
  コーヒーの誕生
  メッカ事件
  コーヒーの家
2章. コーヒー文明の発生的性格
  アラビア・モカ
  カイロの豪商
  レヴァント商人
  オランダ商人
3章. コーヒー・ハウスと市民社会

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