初音ミク 公式ガイドブック ミクペディア (CD付き) (マガジンハウスムック) の感想

私はkz氏の「Packaged」が初音ミクとの出会いでした。
曲そのものに惹かれたのはもちろん，実体を持たないバーチャルシンガーが「歌っている」ということに衝撃を受けると同時に，KEI氏による洗練されたデザインを見て，私は彼女の大ファンになりました。そこからMMDの発展を見つめ，それまで絶対に買うことはないだろうと思っていたフィギュアをあれよあれよと購入し，2009年の第1回ミクフェスにも参加して…ITunesは初音ミクを始めとするボカロの曲で一杯になるほどでした。

それが，いつの間にか目まぐるしく変化・拡大するネットの流れに取り残され，最新の動向や話題についていけなくなり，初音ミク自体に対する興味も薄らいできてしまっていました。

この本に付録の，kz氏による新曲「Redial」は，そんな私のようなファンの心情を表しており，曲名通り，「もう一度初音ミクに接してみよう」という気持ちが湧いてくる，聴いていて涙が止まらない曲でした。付録にはこれ1曲しか収録されていませんし，kz氏の3月20日発売予定のベストアルバムにも収録される予定ではありますが，ぜひ一足早くでも聴いて欲しい。歌詞を掲載するのはマズイと思いますので印象的なフレーズを共有できないのが残念なのですが，特に一度途切れてしまった古参のファンにとって，それだけの価値のある名曲だと思います。

本自体の構成についても，初音ミクを語る上でコレは抑えておきたい，ということを歴史・音楽・動画・イラスト・本などジャンルごとに解説しており，「初音ミクって誰よ？」という知識ゼロの人にも，途切れてしまった人にも丁寧で分かりやすい内容になっています。値段からすると，もう少し多くの紹介や踏み込んだ解説があってもよかったとは思いますが，とても膨大な情報の中からシンプルに纏められているとも言えます。初音ミクに関する「全て」は分からないけれど，どのようなシーンで，どのようなムーブメントが起きているのか，という概要（フレーム）を理解するには十分です。全ページオールカラーで，イラストや写真も多め。ただし，他のボカロについての情報はごく少数であり，それもクリプトン社製のモノ（巡音ルカや鏡音リン・レンなど）に限られているので注意して下さい。