大女優物語―オードリー、マリリン、リズ (新潮新書) の感想

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参照データ

タイトル大女優物語―オードリー、マリリン、リズ (新潮新書)
発売日販売日未定
製作者中川 右介
販売元新潮社
JANコード9784106103797
カテゴリ »  » ジャンル別 » ノンフィクション

購入者の感想

新潮社や文藝春秋のような大出版社から女優の自伝や評伝の翻訳が頻繁に出ていた時期がある。しかしそれは「公文書」のようなもの。正史であって、稗史は丁寧に除かれていた。
本書『大女優物語』は正史を踏まえながら、稗史にもしっかりと足を乗せている。レジスタンスに協力し、バレリーナを目指していたオードリーの生い立ちは正史である。コレットとの出会いもそう。しかし本書はそこで終わらない。オードリーの内面に迫るような事実が綴られるのだ。そこには、貧しさのなかで、売れるためには手段を選ばないという、彼女の切実な思いがある。手段を選ばないとは、実力者の愛人になることも厭わない、ということである。つまり、この本では大女優オードリーについての一般的メメージは覆される。マリリンにしても、大スターの地位を投げ捨てて演技の勉強をしなおすひたむきな姿勢があり、それはビリー・ワイルダーの証言する「遅刻を繰り返すいいかげんなセクシー女優」というイメージとは真逆となる。逆に言うと、ビリー・ワイルダーがマリリンに先入観をもっていたからこそ、マリリンは彼の現場を忌避していたのかもしれないのだ。マリリンはすくなくとも真面目であり、真摯な人物であったのだ。リズもまた、世評を気にすることなく、労働者階級の男性と正式に結婚している。彼女のなかにセレブという自意識がすこしでもあったなら、この選択はありえなかった。イギリス貴族のようなブルジョワ・イメージを纏っていたリズはまた、庶民の心をもっていたのである。
著者の中川氏の手になる記述を読みながら、わたしはまるでマジックにかかってるのではないか、と自らを疑わざるを得なかった。イメージ顛倒の衝撃度はそれほど凄いものだった。でもマジックではない。中川氏は歴史物を描くのと同じ手法で、複数の文献(かならずしも女優本人にかかわるものだけとは限らない)にきちんとあたっているのである。
なぜ、日本にこれまで、このような本が存在しなかったのか。パイオニアたる中川氏のこの本から、新たな「女優物語」「男優物語」がスタートすることを、映画ジャーナリズムに強く期待している。

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新潮社から発売された中川 右介の大女優物語―オードリー、マリリン、リズ (新潮新書)(JAN:9784106103797)の感想と評価
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