ハイパーインフレの悪夢 の感想

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タイトルハイパーインフレの悪夢
発売日販売日未定
製作者アダム ファーガソン
販売元新潮社
JANコード9784105062712
カテゴリジャンル別 » ビジネス・経済 » 経済学・経済事情 » 経済史

購入者の感想

ユートピアが理想郷と訳されるのに対してその対極に位置するのがディストピアで地獄郷と訳される。ユートピアは実現が難しいがディストピアはそうでもない。本書は1975年にイギリスで“When Money Dies”という題名で出版されてテレビの番組でも紹介された。「オカネがオカネでなくなる時」というのが題意であろう。それは1920年代のワイマール共和国時代のドイツのハイパーインフレーションの悲喜劇(悲劇は時として喜劇である)を描いたものである。
1922年の初頭に1ドルは4.2マルクであった。それがその年末には17,000マルクになり、翌1923年9月には98,860,000マルクへと坂道を転げ落ちた。このようにして同年11月20日、1ドルが4兆2,000億マルクに達したのにタイミングを合わせてこれを1レンテンマルクとする高額紙幣が発行された。マルクのレンテンマルクへの交換比率は、1922年初頭比で1兆分の1である。(レンテンマルクは1924年8月30日に1対1の交換比率でライヒスマルクに代わる。)これによってハイパーインフレーションは終息に入るが、なぜそうなったかの真の理由が不明なままに「レンテンマルクの奇跡」という言葉が生まれた。
これがインフレの歴史に名高いドイツのハイパーインフレーションについて知られるあらすじである。しかし本書が指摘するように、これは第一次世界大戦に敗北したドイツ、オーストリア、ハンガリーの国民がなめた経済的辛酸のクライマックスであった。本書は敗戦に打ちひしがれた庶民に追い打ちをかけるハイパーインフレ―ションの猛威がどんなものであったかを教えてくれる。
ジョセフ・スティグリッツ教授の言うように「市場は自己修正がきかない」。アダム・スミスのいう「見えざる手」は効力を失ったのではなく、そもそも存在しないから見えなかったのである。歴史は姿を変えて繰り返す。この後日談と言うべきか、ドイツはこのハイパーインフレーションの悪夢のために金平価にしがみつき、1929年のアメリカ発の大不況の波をもろに受けている。不況はヒットラーを生み、インフレはヒットラーの時代にも、また戦後にも繰り返された。

1975年に書かれた本で、欧米では昨年話題になったという。2008年の金融危機以来、不安定化する主要国通貨を前に、あのドイツで起こったハイパーインフレを克明に追うことによって、貨幣とは何かを考えさせてくれる。

庶民の目線で、丹念に通過の価値がとてつもなく下落していくさまを見ると、背筋が寒くなる。特に、1920年ごろのドイツでは、紙幣の乱発が通貨価値の下落を招いているとは、ほとんど誰も気づいていなかったという事実に、いつの時代でもある状況下にあるとその危機の大きさに気づくのはずっと後になってからと思わざるを得ない。

そして、6年に及ぶ天文学的な下落の後の緊縮策で、ようやく安定が図られたとたん、実質的なマイナス金利で潤ってきた企業がばたばたと倒産する。
インフレでも、デフレでもいつも苦しめられるのは庶民である。

注目したいのは、ハイパーインフレに突き進んで行ったドイツのある一時期と、今われわれが住むこの国の国家予算に占める負債の割合が変わらないことである。
このまま政府の無策が続いていくと、ワイマール共和国との相似形さえ可能性は否定できないとも思えてくる。
その時点では、積み上がる負債が帳消しにはなるだろうが、引き換えの代償はあまりにも大きい。

今この時点でさえこの国の国民は、この本のドイツ国民と同様、迫り来る危機の大きさに気付いていないように見える。

なぜ、第一次世界大戦後のドイツでハイパーインフレが起こり、
それによって国家と社会がどのように壊滅したのか。
ヒトラー台頭・第二次世界大戦前夜の状況は、
歴史の教科書でさらっと触れられている程度ですが、
そこを顕微鏡で覗き込むようにして、丹念に綴った本です。
わたしにとっては、発見の連続でした。

とはいえ、決してお堅い研究書ではなく、エピソード満載の読物。
翻訳の工夫や池上彰さんの解説のおかげでもあると思いますが、
予想以上に読みやすかったです。
おどろくのは、書かれている内容が怖いほど現在と似ていること。 
アメリカをはじめ、世界の先進国が赤字国債を刷りまくっていますが、
発行が限界を超えるとどうなってしまうのか、考えさせられます。
海外のamazonレビューの評価もかなり高く、
先進国で同様の評価を得ていることがわかりました。

日本では、6月の国会で、この本が取り上げられていましたね。
与謝野馨氏(経済財政担当相)と、東祥三氏(金融担当副大臣)のやりとりで、
「なぜ消費増税なんだ。なぜ何十兆でも赤字国債を刷らないんだ!」
とかみつく東氏に対し、与謝野氏は
「そういうことをするとどうなるか、良い本があるので送ります」
と言っていました。
本書を読むと、増税か赤字国債かという論争が昔からあったことがよくわかります。
そして、その判断を誤ると国が滅んでしまうことも。

最後に、友人から聞いた話ですが、
本書は日銀マンの間でも話題になっているそうです。
こんな悪夢の未来が現実化しないよう祈りたいです……。

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