宇沢弘文の経済学 社会的共通資本の論理 の感想

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タイトル宇沢弘文の経済学 社会的共通資本の論理
発売日販売日未定
製作者宇沢 弘文
販売元日本経済新聞出版社
JANコード9784532356354
カテゴリジャンル別 » ビジネス・経済 » 経済学・経済事情 » 経済思想・経済学説

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 本書は、2005年に私家版として出された宇沢弘文氏の著作を日本経済新聞社が再編集して刊行したものである。宇沢弘文氏がその構築に50年におよぶ精力を注ぎ込んだ社会的共通資本の体系が平易に語られていて初学者でも読みやすくまとめられている。宇沢氏の生涯と思想を記述した「経済学は人びとを幸福にできるか」(東洋経済新報社)、「経済と人間の旅へ」(日本経済新聞出版社)を併せて読めば、宇沢氏の思いがより深く理解できるだろう。

 全体が3つの部に分かれている。第1部はジョン・スチュアート・ミルに始まるリベラリズムの思想がソースティン・ヴェブレンの制度主義の経済学へと展開されていった歴史を振り返る。ヴェブレンは、すべての人々が人間的尊厳を守られ、市民的な権利が最大限に享受できるようなリベラルな理念に立った経済体制を実現しようとした。宇沢氏はこの制度主義の考え方を具体的なかたちで社会的共通資本と表現したのであった。

 初めに印象的な挿話が紹介されている。宇沢氏は旧制一高時代に木村健康先生からジョン・スチュアート・ミルの「自由論」を教わったが、先生は弾圧された河合栄治郎教授を弁護したため憲兵に睨まれ拘留される。憲兵隊へ木村先生を迎えに行った宇沢氏は過酷な取り調べでやつれ果てた先生を見ることになる。この体験が宇沢氏の反権力、リベラリズムの原点になったのだろう。後に宇沢氏はシカゴ大学から東大に戻り、退官する木村先生の講座を継いだのである。

 第2部は、「自動車の社会的費用と社会的共通資本」。宇沢氏が社会的共通資本を考えるきっかけは、1960年代に日本において自動車が大きな社会的費用を発生していることに注目したことにある。宇沢氏は、道路建設、交通事故、子供の遊び場の消滅、排ガスの発生、等々の費用を算出し、1台当たり200万円という数字を提出した。そして、社会的費用の概念は市民の基本的人権に密接に結びついていて、自動車が安全で健康的に生きる市民の権利を脅かしていることを強調したのである。一方で、社会的費用を算出する意義を認めない、あるいは過小に算出する新古典派経済学を宇沢氏は厳しく批判した。

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