Blood Meridian の感想

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参照データ

タイトルBlood Meridian
発売日販売日未定
製作者Cormac McCarthy
販売元Picador
JANコード9780330510943
カテゴリSubjects » Literature & Fiction » Genre Fiction » Action & Adventure

購入者の感想

その昔、友人にペーパーバックを貸したまま返って来なかった為、この度、デジタル版を購入。有名過ぎるほど有名なアメリカ現代文学の金字塔で、19世紀半ばのアメリカ南西部を舞台にしたウェスタン叙事詩。しかしウェスタンに存在する善人vs.悪人の構図がここにはない。なんたって半端ない悪人しかおらないので。
「ジャッジ・ホールデン」と呼ばれる悪魔か軍神あるいは古代からの人類の悪を具現したかしているキャラに率いられた軍団が、ひたすら流血・流血・流血を重ねて行く暴力寓話、あるいは、人類創成神話。「The kid」とだけ呼ばれる十代少年がその軍団の仲間入りをし、その中でホールデンを観察し、その哲学を聞き、成長していく(多分)。聖書とか古代叙事詩と同じようにキャラのアクションしか描写されず、「内面」や「意識」が綺麗に省かれているので、動機だとか心理だとか下司の勘繰りをしても無駄。古代文学がそうであるように、この小説は21世紀にちょこなんと存在する読者が有する世界把握を凌駕している。言語誕生以前から存在した人間無意識の臓腑をむんずと掴んでページ上に降ろしてきたかのような。キャラの行動の理屈を考えても無意味だし、何故、暴力が、戦争が、この世に存在するのかってな問いも無駄なのだな。「何故『石』が存在するのか」というのと同じだ。そこに在るもんは在るんである。
詩的な散文で誉れ高いが、「See the child.」の一言から始まる文章世界には無駄な一文、余計な一言も存在しない。垂涎モノの、羨望で歯軋りしたくなるような詩的感性でもって、凄惨なる大量虐殺がひたすらに綴られていく。ほとんどブロットのない世界で、度重なる暴力行為だとてブロット進展の仕掛けになっていない。厳密にはストーリーテリングでさえないのかもしれない。このレベルまで来ると「小説」なるものも謎めいてくるとしか。この小説自体、何やら「神秘」の領域にある。全ての芸術作品がそうであるように。ちなみに「ジャッジ・ホールデン」は何でも出来るバケモノ系のキャラなんだが、「War is God.」の台詞とともに文学史に燦然とその名を刻むこのキャラ、自身が「自然の脅威」であるかのような男は、ナント、踊りの名手でもあるのだよ…。

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