江戸年中行事図聚 (中公文庫 (み27-4)) の感想

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参照データ

タイトル江戸年中行事図聚 (中公文庫 (み27-4))
発売日販売日未定
製作者三谷 一馬
販売元中央公論新社
JANコード9784122030428
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 文化人類学・民俗学 » 祭り

購入者の感想

四季に恵まれた日本では、季節の移ろいに併せて様々な行事が執り行われて来た。
取り分け庶民文化が花開いた江戸時代…様々な行事があらゆる階層の人々の暮らしの中で育まれ、そして彼等は一斉に楽しんだである。
そこで、この江戸時代に焦点を当て、庶民の間で親しまれた「年中行事」を豊富な図版と史料に依って紹介し、当時の豊かな季節感や伝統を垣間見せてくれるのが本書である。

本書は元旦に始まり、大晦日を以って幕を閉じるものの、単純に「餅つき、書初め、お年玉」…とは訳が違う。
年初めの行事だけを取ってみても「若水」「年徳棚」「太神楽」等、余り聞き慣れない文言が連綿と続くので、現代では廃れてしまった行事が如何に多いか…という事を改めて考えさせられるのではなかろうか。
また、現代の「七五三」の原型である「髪置・袴着・帯解」も興味深い。
当時は男女共に三歳で髪置、その後に男子は五歳で袴着、女子は七歳で帯解のお祝いがあった事を詳しく紹介しているので、今現在への名残を実感する事が出来るであろう。
更には、鏡餅の切り方、端午の節句の柏餅、花火大会に関する当時の逸話や「玉屋」と「鍵屋」が実権を握った事情等など、豊富な話題で読者を楽しませてくれる。
今私達が由来も知らずに「イヴェント」として楽しんでいる行事の一つ一つに奥深い意味があり、そして歴史があるのだという事を鑑みるにつけ、実に感慨深いものがあった。

尚、本書は多彩な史料を基に整然と纏められているので、まるで「年中行事辞典」さながらの網羅性と便利さである。
また、これは同シリーズの『江戸職人図聚』のレビューにも書かせて頂いた事なのだが、浮世絵等の安易な転載に頼らずに、絵画史料を基に著者自身が描いた図版を掲載しているのも画期的であり、極めてシンプルな筆致からは当時の行事の様子や風俗等が具に解る。
解説に関しては、史料からの引用も多いので若干読みにくい部分もあるが、丁寧な補足説明もあるので、誰もが気軽に読めるであろう。

本書を読むと、江戸の人々は年中行事の為だけに生きていたのではないかと思ってしまう。
いや、冗談ではなく、それ程までに豊かなのだ。

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