量子力学で生命の謎を解く 量子生物学への招待 の感想

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参照データ

タイトル量子力学で生命の謎を解く 量子生物学への招待
発売日販売日未定
製作者ジム・アル-カリーリ
販売元SBクリエイティブ
JANコード9784797384369
カテゴリ » ジャンル別 » 科学・テクノロジー » 科学読み物

購入者の感想

量子力学に関する一般向けの本は世の中に数多くあるが、この本は生物学との関連を述べている点で新鮮さがある。コヒーレンス(同時に複数の状態にあること)、トンネル効果、不気味な遠隔作用といった量子力学特有の現象が生命に直接的な効果を及ぼしている可能性について述べている。生命には量子力学が直接的に関係しているという説は、量子力学の創始者の一人であるシュレーディンガーが「生命とは何か」で展開している。それは、熱力学的な雑音の中で、生物は特異な秩序を保っていると見抜いたからである。しかしながら、長年の間それを確かめる手段もなく、生物学は古典的な物理学、化学に基づいて説明されてきた。

そのような中で、光合成において光受容体でキャッチした光のエネルギーが量子力学的なコヒーレンス状態を保って反応中心まで届いていることが直接的な証拠によって示され、研究者達を驚かせた。

この本では、鳥の渡り、魚の回遊、遺伝子の突然異変、脳における「意識」、生命の起源(タンパク質の生成)といったことにも量子力学的な作用が働いている可能性があることを慎重ながらも、最新の研究と合理的な説明によって述べている。

この本の構成として興味深いのは、各章が量子力学とは直接関係ないながらも興味深い雑学、例えば、魚の回遊の神秘、南極の氷床下に眠るヴォストーク湖の話、ショーヴェ洞窟の発見などを導入とし、次に、嗅覚の仕組み(形状説と振動説)、磁気受容体、不気味な遠隔作用、互変異性体、脳の電磁場、スタンリー・ミラーの実験、量子的熱機関など、興味深いテーマを次々と展開している点である。

なお、著者の一人、ジム・アル=カリーリはTEDでトークを行っている(2015年8月公開)。本書の導入としてご覧になることをお勧めしたい。

「量子生物学」という(私にとっては聞き慣れない)学問手法で、シュレーディンガー「生命とは何か」中の問い(問題提起)に対しての回答を試みた意欲溢れる力作。ドーキンス流の科学啓蒙書を目指した節があるが、(少なくても日本人にとっては親しみ易い)「進化論」とは異なり、日常感覚とは乖離した量子力学を解説するとあって、著者達の筆運びは慎重であり、苦労の跡が窺える。上述した量子が持つ日常感覚と乖離した性質とは次の二点であろう。

(1) 粒子と光の二重性 (これは、まあ納得出来る)
(2) 状態の「重ね合せ」(量子もつれ)という概念 (あのアインシュタインでさえ、「神はサイコロを振らない」と言って否定していた)

著者達も読者の反応(反発)を意識してか、いきなり、「生命とは何か」に迫らず、鳥の渡り、魚や昆虫の帰巣本能等の例を用いて、如何に「量子生物学」がこれらの現象を上手く説明出来るかについて論述している。ジックリ読むと(読み飛ばせる程の平易な内容ではない)、何処でかは自分でも良く分らないが、波動方程式との関係において上述の(1)と(2)を一度に理解出来た気になった。その意味においては、説得力のある解説である。「コヒーレンス(coherence)」が中心概念である事も良く伝わって来た。

しかし、肝心の「生命とは何か」、「意識とは何か(ペンローズの『皇帝の新しい心』を反駁するために採り上げている)」に関しては、「量子生物学」で説明出来る"可能性がある"という所で留まっている。「生命の起源」についても、ある仮説を採り上げているが、これも「量子生物学」で説明出来る"可能性がある"という所で留まっている。ある意味では残念な結果だが、現状の「量子生物学」の進捗度合(限界)を率直に語っているという意味では抑制が効いていて好感が持てた。また、私は計算機のソフトウェア開発を生業としていた関係で「量子計算機」に興味を持っていた(ビットの代りにキュビットを使えば、真の並列計算が可能な事は頭では理解出来るが、どうやって実装するのか皆目不明だった)のだが、著者達も現状では「高性能の『量子計算機』の実現は難しい」と語っており、この点でも好感が持てた。

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