ビートルズを聴こう - 公式録音全213曲完全ガイド (中公文庫) の感想

いろんなアングルからビートルズが語られていて大満足。解説の長さが曲の長さと同じくらいというのも意図したことだろうか。だったら、これもスゴい。

「ビートルズを聴こう」の呼びかけに誘われて四十年ぶりにレコードを引っぱり出して聴いてみた。著者がまえがきで提案しているように、作品を聴きながら読む方法を試してみると、「あら不思議」、曲の本来持っている良さが際立ち、まさにビートルズの「かっこよさ」をより深く味わうことができた。この「案内書」の長所は、まず、一曲あたり約三十行にまとめた解説文の長さが絶妙であること。これが、曲の長さ（三分間程度）とあいまって心地よいリズムを刻む。そして、歌詞の要訳がすごい。わずか数行の訳詞により曲のエッセンスを抽出させる。これに、時代背景・心象風景・レコーディング事情などが加わり極上のハーモニーを奏でる。また、多くの人が指摘するように、対談という形式が曲を理解する上で最上の方法となっていることは特筆すべきことだと思う。それでは、ビートルズの楽曲の「かっこよさ」とは何なのか。この問題を考える前に、以前、どこかの雑誌で見た「ある写真」のことに触れておきたい。二十代前半と思われる三人の男性がこちらを向いて微笑んでいる。両脇は、ポールとジョン、中央にいるのは驚く無かれジョージィ・フェイム。『イェー・イェー』の大ヒットはあったものの、基本的には黒人音楽一筋の職人気質で知られる男である。単なる気まぐれの記念写真くらいに思っていたら、今回、『リボルバー』のライナーノートを再読して両者の関係が垣間見られた。ビートルズがジャズ的な要素を取り入れた最初の曲『ゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ』のホーンセクションを誰にするか、という相談にのったのがジョージィ・フェイムだったのである。この事実から想像できるのは、ミュージシャン同士の信頼関係や、妥協を許さない曲作りの姿勢だろう。この、まさに、曲が生まれる瞬間に立ち会うこと、聞き慣れたビートルズの楽曲ではなく、今出来上がったばかりの「新曲」としてビートルズを聴くことが楽曲の「かっこよさ」を発見することではないか。高校の三年間を熱病につかれたようにビートルズの音楽のみを聴いて過ごしたもの（私のことです）にとって、ビートルズはあまりにも特別で、悪い意味で神格化されている。そこに風穴を開ける試みとして、この著作は有益であり、まさに、「ビートルズ行きのティケット」としての役割を担うことになるだろう。好きなところを一箇所あげるなら『イン・マイ・ライフ』でのこ