言語を生みだす本能〈上〉 (NHKブックス) の感想

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タイトル言語を生みだす本能〈上〉 (NHKブックス)
発売日販売日未定
製作者スティーブン ピンカー
販売元日本放送出版協会
JANコード9784140017401
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 言語学 » 言語学

購入者の感想

人は摂取した食物を消化することを学ばなくていい。
胃腸などの消化器官がすでに体内にあり、
それらは学習せずとも、必要な機能を自動的に発揮するから。

言葉もそのように、脳のどこかに言語脳のようなものがあり
(まだ位置などは特定されていない)、言語能力が既得であるという立場の論者による説。

各母語の細かな文法や語彙、正確な発声などは後から学習されるが、
言語の根本的な能力は。そういった形で人の中にすでに先天的に組み込まれている。
そのことが重点的に詳しく書かれている本かと思ったが、違った。

そういう内容ももちろん含まれているが、著者の記述は、文法、音声など、言語学全般に行き渡る。
それはアメリカの学者(学界)の現在の考え方を伝えてくれるもので興味深い。

特に文法に関する記述は刺激的。日本語を「トピック先導型言語」とすぱっと言い切っていたりする。
「が」と「は」の文法的混乱や、それについて正しく指摘した学者の説を長く黙殺した日本の国語学界とは、
ずいぶん違う。事実や特徴をそのままズバリと取り上げる手法は効果的。

それと「動詞主導型の文法理論」。
著者は「動詞は文の中で、専制君主のように、各部に適語を置くことを要求する」という。
これが上記の既得言語脳からの命令で、非学習的なもの。
これらが書かれている第四章「言語の仕組み」は、面白く読めた。

言語の文法について語っていても、日本で流通している日本人の著者たちとは違った
角度や用語、論点を持っているので新鮮。

言語の獲得が人間の本能として、脳内に組み込まれていることを、
ユーモアを交えながらわかりやすくかつ深く解説したものです。
ゲノムメカニズムが脳内配線を大まかに決め、幼少期、成長期を通じて、
言語の獲得・活用に関する脳内配線が決まるというものです。
従って、大人になってからの外国語の習得が難しいこと、
外国語の習得・活用は母国語と異なる脳内配線を使うこと、
が本書で詳しく解説されています。

言語といえば、ノーム・チョムスキーですが、
ピンカーはその弟子でありながら、チョムスキーを超えた理論を展開しています。

進化心理学者であるピンカーは、本書を皮切りに、
進化理論をベースとして人間の本性に迫っていきます。
「心の仕組み」「人間の本性を考える」も併せて読まれることをお薦めします。

久しぶりにとても面白いくてためになる本を読んだと思う。
言語学といえばどうしても難解なイメージが付きまとうが、
このスティーヴン・ピンカー氏の語り口は平易であり、難しい
内容をわかりやすく説き進めていってくれる。

この本を読むまではウォーフとサピアの言語決定論に代表
されるような「人間の思考は言語に依存する」という意見や
子供が言葉をしゃべれるようになるのは親が教えるからである
という意見を信じていたが、、、
実際にはそうではないことが理解でき、目からうろこが落ちた
気分である。

スティーヴン・ピンカー氏の考えはまさに現代の最新の
言語学の一翼であり、言語について考える人は必ず読んで
おくべきである。

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