わが闘争(上)―民族主義的世界観(角川文庫) の感想

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参照データ

タイトルわが闘争(上)―民族主義的世界観(角川文庫)
発売日販売日未定
製作者アドルフ・ヒトラー
販売元角川書店
JANコード9784043224012
カテゴリ »  » ジャンル別 » 歴史・地理

購入者の感想

 上巻では、ヒトラーの生い立ちから第一次大戦に従軍した後政治活動に入り込んで成功していくあたりまでの経緯を綴る中に、歴史や政治、民族についてのヒトラーの考えが織り込まれていく。
 文学的な表現力、長文の構成力という点では、少々偏執的ではあっても並でない力量に端的な感銘を覚える。しかし、その確かな文章で築かれた本書には、冷静な理性の目と熱病に浮かされてうつろにすわった目とが並んでこちらを見据えているような、なんとも気色の悪い居心地の悪さがある。
 政治の仕組みとしての民主主義の危うさを指摘し、それを逆手に取る大衆宣伝に注目するあたりの認識には、冷徹で非凡な炯眼を認めるべきだろう。しかしながら、アーリア人こそが選ばれた優秀な民族であり、他の劣等な民族を踏みにじって栄えるべきであるとし、さらには西欧社会を土台から腐らせている元凶はユダヤ民族の陰湿な陰謀にあるなどと息巻くところを目の当たりにすると、まるでスーツを着込んだ紳士が電車の中で相手も無くいきなり大声で罵り始めるところを見ているようで、とても共感だの反感だのという気持ちの興る代物ではない。とは言っても、これを幾分か穏便な表現に焼きなおしさえしたなら、昨今威勢のよい発言で人気を博している政治家たちとまるっきり見分けが付かなくなってしまうのではないかという気もする。
 本書がヒトラー一人で構成、執筆したものであるかどうかはさておき、ここに説かれているところは今日に至るまで何一つ克服されていないと思い知るところから、改めて今後の社会のあり方を問い始めるべきだろう。気休めのレッテルを貼って本書を黙殺することは、社会を考える上でプラスにはならない。

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